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理不尽に家族を奪われた私は復讐する

作者: Xsara

ガザの空は、いつも灰色だった。2023年10月、ラニアの人生は一瞬で崩れ去った。イスラエルとハマスの戦争が勃発し、彼女の日常は永遠に失われた。

ラニアはガザの大学で医学を学んでいた。夢は、ガザの子どもたちを救う医者になることだった。だが、大学はハマスの拠点と決めつけられ、イスラエル軍の封鎖で閉ざされた。その夜、帰宅したラニアを待っていたのは、瓦礫の山だった。イスラエル国防軍(IDF)の誤爆で、家も両親も弟も、跡形もなく消えていた。



幼馴染のハッサンがラニアの手を握り、震える声で言った。「復讐しよう、ラニア。奴らに償わせる。」ラニアの心は憎悪に燃えた。家族を奪ったIDFに報復するため、彼女はハッサンと共にハマスの軍事組織、カッサム旅団に身を投じた。ガザでは女性戦闘員は珍しかったが、彼女の決意は誰にも止められなかった。


訓練は過酷だった。埃っぽい地下施設で、使い古されたAK-47やRPG-7の扱いを叩き込まれた。男たちの中で、彼女は常に自分を証明する必要があった。だが、訓練の合間にも、ガザは廃墟と化していった。爆撃の轟音が鳴り響き、かつての級友や近隣の家族が次々と命を落とした。

ある夜、ラニアはカッサム旅団のロケット発射任務に参加した。イスラエルの居住区に向け、無数のロケットが夜空を切り裂く。だが、その光景にラニアは違和感を覚えた。ロケットの軌跡は、復讐の象徴のはずだった。なのに、なぜか胸が締め付けられた。「私が憎むのは民間人じゃない。IDFだ。」その思いが、彼女の心に深く刻まれた。



数日後、IDFのメルカバ戦車がガザ市街に侵攻してきた。ラニアは対戦車チームに志願した。指揮官は冷たく告げた。「戦車一台を仕留めるのに、どれだけの戦闘員が死ぬと思う?よく考えろ。」だが、ラニアの復讐心は恐怖を凌駕していた。彼女は、家族の笑顔を奪ったIDFに、必ず報いを受けさせると誓っていた。


作戦当日、ラニアのチームは瓦礫の陰に身を潜めた。反対側には、ハッサンのチームが同じくRPG-7を握っている。旧式のRPG-7では、メルカバの装甲を貫くには多方向からの同時攻撃が必要だった。全てはタイミングにかかっていた。

メルカバの重厚な駆動音が近づく。随伴歩兵が周囲を警戒しながら進む。突然、IED(即席爆発装置)が炸裂。前衛の兵士が爆炎に飲み込まれた。重機関銃が後方の歩兵を薙ぎ払う。戦闘の火蓋が切られた。

ハッサンのチームが瓦礫から飛び出し、RPG-7を構えた。だが、ラニアのチームで立ち上がったのは彼女一人だった。仲間たちは、戦車の轟音と爆発の恐怖に震え、動けなかった。ラニアは歯を食いしばり、RPG-7を構えた。彼女の指は震えていたが、目はハッサンの姿を追いかけていた。

三発のロケットがメルカバに命中。だが、世界最強の戦車は火を噴きながらも動きを止めない。砲塔の重機関銃が火を噴き、ハッサンのチームを瞬く間に挽き肉に変えた。ハッサンの身体は、血と土にまみれて崩れ落ちた。

「ハッサン!」ラニアの叫びは爆音にかき消された。涙が頬を伝ったが、彼女は憎悪に突き動かされた。仲間が放りだしたRPG-7を拾い、構え、発射。ロケットはメルカバの砲塔に直撃し、爆炎と共に砲塔が空高く吹き飛んだ。戦車は沈黙した。

戦闘後、カッサム旅団はハッサンたちの遺体を集めた。肉片すら見分けがつかず、簡素な棺に納められた。葬送曲は爆撃の残響だった。怖気づいた射手は旅団を去り、家族のもとへ逃げ帰った。ラニアは彼を軽蔑したが、同時に彼の選択を理解した。彼にはまだ守るものがあった。ラニアには、もう何もなかった。



ハッサンの墓の前で、ラニアは拳を握りつぶした。かつて医者として命を救うと誓った手は、今、血と硝煙にまみれている。「私が死ぬまで、IDFの兵士を一人でも多く道連れにする。ハッサン、約束する。」

ガザの空は、今日も灰色だった。だが、ラニアの心は、憎悪の炎で赤く燃えていた。



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