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1.開幕

箱入令嬢に出てくるサブキャラ……ドジっ子メイドのラニカちゃんのコトを脳内でちまちまこねくりまわして思いついたネタを隙間時間に書き溜めてたら結構な分量になってきたしキリの良いところまでまとまったので公開することにしました


本作は外伝ですが、本編を知らなくても楽しめるようにはなっている……ハズです


本編と比べるとだいぶ毛色の異なる恋愛薄めの逃亡旅&アクションな感じになっております

お読み頂いた方々に少しでも楽しんで頂ければ幸いです


「これは独り言なのですが、休日を満喫していたはずなのにどうしてこんな場所にいるのでしょう?」

「それならオレに聞こえるような声出すなよ」


 どことも知れぬ荒野で、その女性はそんなことを口にしながら歩く。

 着ている服は仕立てが良く、髪や肌の艶も良いので、それなりの身分の女性であることは分かる。 


「独り言を続けますが、自分がドジだとは思っていましたがまさかこんなコトに巻き込まれるのは想定外でした」

「それに関しては謝ってんだろ」


 その愛らしい顔にあるそばかすは、むしろ彼女の魅力を高めるチャームポイントのようになっていた。


 その女性は、横から聞こえる気がする少年の声を無視して独白を続ける。


「まぁ正直なところ、思うところがあってわざと捕まった面も否定しませんよ。でもまさかこんなコトになるなんて思わないじゃないですか。独り言ですよ、独り言」

「オレを無視すんじゃねぇよ」


 何やら横で灰色髪に褐色の肌をした目つきの悪い少年の幻が喚いている気がするけど、それは気のせいだ。気のせいである。気のせいということにしたい。無理だけど。


「やっぱり独り言なんですけど。

 どんな魔法ならこれが実現するのでしょうね。ふつうの馬車なら最短でも二週間くらいはかかりそうな場所な気がするんですよね、ここ。

 少なくとも、王家直轄領地にこんな場所なかったはずですし」

「いい加減にしろよ、テメェッ!」


 さすがに我慢できなくなったのか、少年を女性の肩を掴んでガクガクと揺さぶった。


「もう、何をするんですかアッシュ君は。

 わたしは今、冷静に現実逃避をしているんです。邪魔しないでください!」

「冷静に現実逃避とか言っている時点で色々ダメだろッ! とっとと正気に戻って現実を直視しやがれッ!」

「何言ってるですかッ! いつもの私なら冷静さを欠いて現実逃避どころじゃないんですよ! これでもがんばってるんですよ!? がんばって冷静に現実逃避しようとがんばってるんですよッ!」

「がんばったところでどっちにしろどうしようもねぇようにしか聞こえねぇよ! いいから現実直視しろッ!」

「いーやーでーすーッ!」

「ガキみたいにほっぺた膨らませてんじゃねぇッ!」


 などと、一通り少年と無駄な問答を繰り広げたところで、女性は盛大に嘆息した。


 みすぼらしい格好をした長身痩せぎすの少年の言うことはもっともだ。

 乱暴な言葉で女性にツッコミを入れているものの、彼のその常に薮睨みしているような鋭い眼差しの奥――紫色の瞳は不安と申し訳なさで揺れている。


 置かれている状況を考えれば、彼だって不安でいっぱいのはずだ。

 彼女だけが現実逃避していればどうにかなる状況でもない。現実逃避したって状況は改善されないことに関しては考えないことにする。


 何にしても、自分たちが元の場所に戻る以前に――まずはこの場所から生きて人里までたどり着けるかどうかという問題があるのだ。


「アッシュ君。君の魔法で、この近辺の人里探せません?」

「オレの魔法でそんな便利なコトできると思うか?」

「使い方次第でイケそうですけどね……まぁ今すぐ使えるようになれとは言えません」

「そういうテメェはどうなんだよ?」

「出来ると思います?」

「使い方次第でデキんじゃね? 知らねぇけど」

「まぁ言われてみると、やってやれなくはなさそうですが……。

 どっちにしろすぐに使えるようなモノじゃないですよねぇ……」


 お互いに顔を見合わせて嘆息しあう。

 ややして、女性は覚悟を決めると顔を上げた。


「まぁ冗談はさておいてここで嘆いていても仕方がありませんね。

 元いた場所へ帰りたいのはやまやまですが、まずは生き延びる為に人里を探します。異論は?」

「ねぇな。まずココがどこだか分からねぇと帰りようもねぇだろうしよ」

「そういうコトです」


 お互いの意見が一致したところで、女性は優しく微笑みながら手を差し出しす。


「改めて、ラニカ・ラグア・パニカージャです。

 ラニカと呼び捨ててくれて構いません。よろしくお願いしますね」

「……アッシュ・イリンズだ。巻き込んで悪かった。

 面倒をかけると思うが、よろしく頼む」


 アッシュはそのみすぼらしい格好には不釣り合いの、無骨な金属製の手袋をした手で、ラニカの手を握り返した。



 二人の出会いは、二日ほど前に遡る――




今日は公開初日なので、準備が出来次第、次話を公開します

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