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009-星降る地に降り立ち、俺立てない。

 さて、キャラメイクを終えたプレイヤーに向けてゲームが送るものはなんだろうか?

 これがマニアクスであれば、頭が痛くなるようなオープニングムービーか、オープニングムービーがあるならば良い方で無音でフィールドに放り出されるか、最悪の場合はバグか仕様か知らんがノーパラシュートスカイダイビングを強いられトマトになるか……といったところだ。

 だが、きっと『神ゲー』たる『天骸のエストレア』は違うのだろう―――。


「無言でフィールドに放り出すタイプだったか」


 ―――と、思っていたのだが、全くそんなこともなく俺は特に何の激励の言葉も無しに放り出されていた。

 ……眼前に広がるのは僅かに吹く風に揺れる草原と、遠目に見える羅列する建物群、それらの背景を一色に塗りたくる満天の星空だ。


「……なるほど。あいつが惚れ込むのも分かる」


 その、星空のなんと美しいことか。

 別にこういった壮大な景色に感動するような感性を持ち合わせていない俺ですら、思わず数秒は見入ってしまう……少なくとも、現代の地球に生存していれば基本的に一生涯見ることのないであろう煌々と輝く星々に、俺は金奈がこのゲームの星空が素晴らしい、と褒めた理由を知った。

 …………。

 ……。

 ……知ったはいいが、どうしたものだろうか。

 完全に放り出されている。

 チュートリアルもない。

 あるのは、初期装備として選択した鎧達と背負っている状態にある大盾と直剣―――それと、いつの間にか握らされていたらしい巻物だけだ。


「これは……地図か」


 そんなものを初期装備に選んだ覚えが無かった……とあれば、これこそが『天骸のエストレア』が俺へと示した道標であると考え、羊皮紙のようなもので作られているらしいそれを広げてみれば、恐らくは俺が今立っているであろう場所を中心に、いくつかのアイコンと、そのアイコンが示す場所への距離がメートル法で表示された。

 ……よかった、メートル法で表記してくれている。

 いや、それが普通なのだが。

 拘りに拘り過ぎた一部のマニアクスでは独自の単位を持ち出したりしてくるからな。

 単純にメートルの名前が変わっているだけならいいんだが、ファンタジー世界にメートル法があったらおかしい、とかわけの分からんことを抜かして成体のワイバーンの尻尾の長さを基準にしたワイバーン法とか言い出したゲームもあったからな。

 急に『52ワイバーン級のサイズを誇る超兵器……!? エンカウントまで残り100ワイバーンです!!』とか部下のNPCに言われた時は気が狂いそうになった。

 ちなみにそのゲームのワイバーンの尻尾の長さは大体2m37cm程であり、絶妙にこう……メートルに直すとグチャッとする長さで、実際気が狂った。

 気が狂い過ぎて、リアルで金奈と月文字に『金奈は0.62ワイバーン、月文字は0.73ワイバーンだな』とか思わず言ってしまい、真剣に心配された。

 今となっては、懐かしい思い出だ。


「『角獣の神星骸』と『角獣の街』は同じ方向―――神星骸の麓に、街があるのか?」


 そんなことを思い出しつつ表示されたマップを読み込んでみたが、流石に最初の神星骸から色々な施設があるわけでもないらしく、分かったことはこのまま直進すれば『角獣の街』なる場所に辿り着き、更にそこから直進すると、マップの右上に表示されている(おそらく)エリア名と全く同じ名前をした施設……『角獣の神星骸』に辿り着く、ということだけだった。

 つまりは、まあ、とりあえず真っ直ぐ進めということなのだろう。

 こういう時に色々周囲を散策すれば何かしらを得られるのがオープンワールドなゲームの特徴だが……そういうのは、大概が後からでも問題ないことが多い。

 少なくとも俺はそう考えている―――。


「……ん? ぐッ!? おァっ……!!」


 ―――考えているから、前に進もうと思ったのだが……俺は一歩踏み出そうと身体を少し前に傾けたら、そのまま顔から地面にダイブしてしまう。

 ……どうやら、装備が重すぎてろくに動くことが出来ないようだ。


「た、立てん……!」


 更に言えば自力で起き上がることも不可能なようだった。

 …………。

 ……。

 これは、やったか?

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