008-その名は、サントゥ。
「……初期装備まで選択できるのか? いや、それもそうか……あくまで今選んだのは『最初に攻略する神星骸』なのだからな」
というわけで【減重】の星痕―――どうにもこれを刻んだ武器や防具を装備している間は、身に纏う装備の重量が減少するらしい―――を得ることの出来る『角獣の神星骸』を選んだところ、次はゲームスタート時点で身に纏っている装備を選べと言われた。
こちらはある程度取り返しのつかない要素のようなので(装備は当然ながら売値のが買値より安いのだろう)、慎重に決めた方が良さげだが……俺は、とりあえず片手で握れるらしい直剣カテゴリの中では最長・最重量であるものと、一番デカくて硬いらしい大盾と、一番硬くて重いらしい鎧達を選択した。
理由は単純で、最悪の場合でも強固な盾さえあれば大概の敵はなんとか出来る―――殴られて死なず、こちらが殴ってダメージを与えられるなら、実質その時点で勝利が確定するようなものだ―――ことを踏まえれば、最悪の場合は大盾を残して他の防具は全部売り払って金に出来るし、もしも問題無く使えるならば、このとにかく重い装備群こそ【減重】の恩恵を最も受けられるだろうからだ。
「あとは初期ステータスぐらい―――いや、無い? 無いのか……」
こうして、無事、金髪碧眼の歪な一般男子高校生である『天骸のエストレア』内の俺が、絶対に倒れたら一人で起き上がれないようなガチガチの重装備を身に纏ったところで、ここまで色々と選ばせるのであればステータスポイントの振り分けもさせるだろうと考えたのだが、意外なことに初期装備の選択でキャラメイクは終了のようで、これで良いかどうかを問うウィンドウと、今まで設定した項目達が羅列するウィンドウが並んでしまう。
……大概の場合、STRだとかAGLだとかINTだとかに数値を振り分けるものだと思うが、どうやらこのゲームにはそういうものが一切無い―――というか、表示されているウィンドウに記された俺のステータスが『ATK』『DEF』『INT』『HP』『MP』の5種しかないあたり、そもそもSTRやらAGLやらが少なくとも表面化するステータスとしては存在すらしていないらしい。
「……どうせプレイヤー自体にレベルが存在しないのだから、プレイヤーのステータスは最低限……ということか」
年々複雑化していくのがRPGのステータス画面なのだから、この簡素っぷりは最早異常で……不安すら感じてしまう。
なにせ、今時『物理攻撃』と『魔法攻撃』を区別していなさそうなステータス画面なんて、マニアクスでもまず見ない。
というかHPとMPという必然のステータスを除いたらATK、DEF、INTの3つしか存在していない……このシンプル加減はもはや狂気の域に片足を突っ込んでいると言わざるを得ない。
「まあ、良い。とにかくこれで完成だ。名前もいつも通りサントゥでいい」
下手なソーシャルゲームよりよっぽど薄っぺらいステータス画面に驚きつつも、俺は出来上がった重装騎士に『サントゥ』の名を与えてキャラメイクを完了した。
もちろん、このサントゥという名前は『4×8=32』という安直なものだ。
そもそもとして俺のこの『ウタハ』という名前が全くもって一般的な物じゃないので、こうして安直な名前を付けても安直にならないのは助かるところであり。
ついでに思う。
父よ、なんだこの『ウタハ』という名前は。
少なくとも男に付ける名前じゃないぞ。
見ろ、『橘樹 詩羽』の字面を。
完全に恋愛シミュレーションゲームのヒロインだぞ。
なんど女と間違えられたか分からん。