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004-教えて! カンナさん ~真っ当なゲーム編~

 発信後、俺に訪れた少しばかりの静寂。

 それは秒数にすれば30にも満たなかっただろうが、自らに課せられた使命を放棄し、マニアクスに背を向けているという後ろめたさが……その僅かな時間を何倍にも膨れ上がらせ、確かな質量をもって俺の肩に伸し掛かった。


『珍しいですね。あなたから連絡があるなんて』


 思わず、やっぱり普通のゲームなんてやるのはやめて、シナリオ面はともかく戦闘についてはそこそこ遊べる(一般的な感想)程度のマニアクスを消化するべきだろうか、なんて考え始めてしまった頃、ようやっとスピーカーから人の声が響いた。

 その、よくよく聞き覚えのある、少しばかり冷たい印象を抱いてしまう落ち着いた少女の声は、幼馴染である新葉(にいば) 金奈(かんな)の声で間違いない。


「すまない。急に。迷惑だったか」

『まさか。意外でしたから、驚きはしましたが。決してそんなことは。むしろ嬉しいぐらいです』

「……そうか」


 『ひぐらし☆ハイスクル ~親の都合でド田舎に引っ越し憂鬱だった俺ですが平均年齢50オーバーの過疎島に現存する高校生男児は俺一人だったため自動的にJKハーレム生活を送ることとなり俺の恋愛感情は完全に有頂天になったのだが?~』より与えられたあまりのストレスの酷さから急な連絡を取ってしまったことを今更ながらに認識し、思わず謝った俺に対する金奈の言葉は嬉しいぐらいと、言うわりには抑揚が無く……どこまでが本当かは分からなかった。

 だが、少なくとも金奈は本心を偽るタイプではないので、あまり必要以上に気にする必要はないのだろう。


「早速本題に入らせてもらうが……。金奈は、一般的なゲームにも造詣が深いだろう」

『はい? ええ。まあ。詩羽(うたは)くんと違って、クソゲー以外も』

「クソゲー呼ばわりはやめてもらおう。マニアクスにも尊厳はある」

『クソゲー以外も遊びますからね』

「……………………………………」


 ……金奈は本心を偽るタイプではない。

 故に、平然と俺のプレイするマニアクス達を『クソゲー』だと罵る。

 なぜなんだろうか。

 普通、女の子はクソとかあまり口にしてはいけないはずなのに、クソゲーという言葉を使うことだけは別に問題無いとされているのは。

 世の中の理不尽を感じる。

 だが、まあ、いい。

 今だけは……いいだろう。

 ……そもそもマニアクスは世間一般的にはクソゲーということになってしまっており、どちらかといえば俺達がマイノリティ側であることぐらい全く理解していないわけでもない。


「……今、少しばかりマニアクスを葬送(オク)るモチベーションが下がっていてな。気分転換がてら、流行りのゲームでもやろうか、と……。なにか良いタイトルを見繕って欲しい」

『おや。そうなんですか。ですが疑問ですね。そういうことであれば、わたくしのような者ではなく、月文字(るーん)に連絡を取るべきと思いますが』

「断る。意気揚々と煽ってくる様が想像に容易い」


 不毛な言い争いになるのも本意ではないと考えて俺が話を進めると、金奈は彼女の幼馴染であり、俺からしても共通の友人である月文字―――(いさみ) 月文字(るーん)の名を持ち出してきたが、俺からすればそれだけは有り得ない選択肢だった。

 金奈は確かにマニアクスのことをクソゲー呼ばわりこそすれど、それ以上はしない。

 だが、月文字は違う。

 もしもこんな相談を彼女に持ち掛けたとなればその時は―――。


『あらあらぁ~? おかしいですわねぇ。詩羽さんはくそげー以外を口にしたら死んでしまうはずではぁ? それとも? なんですの? 未来の大テロリストである? この私のぉ? 殺・人・処・女(ハ・ジ・メ・テ)♡ 欲しくなってしまいましたの? やーん、そんな激しい求愛、きゅんきゅんってしちゃいますの♡』


 ―――とかなんとか散々言われて『ひぐらし☆ハイスクル ~親の都合でド田舎に引っ越し憂鬱だった俺ですが平均年齢50オーバーの過疎島に現存する高校生男児は俺一人だったため自動的にJKハーレム生活を送ることとなり俺の恋愛感情は完全に有頂天になったのだが?~』に比類するストレスを与えられることになるのだからな。

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