彼女との関係
「ここで生まれ育ったんですか?」
「違えよ。仕事で引っ越してきたんだ」
「仕事でですか? ここには何年くらい?」
「この街に来てからは、18年~19年くらい経ったな」
「そうですか、随分と長く住まわれているんですね。それよりも実は先程、警察の方に聞いたんですけど、あなたの他にも容疑にかけられている方がいるようです」
「まっ、まじか?」
「はい、警察の方から直接聞いたので間違いないです。その方もこうして同じように現場検証に立ち会わされているようです。私は、その方が犯人だと確信しています。あなたのようないい方がスリをするはずがありません」
「そっ、そうだろ? そう思うだろ?」
「思います。それにしてもその犯人はどこに隠したんですかね? 私なら盗んだものは人目につかない物影に隠そうと思いますが、あなたなら、どの辺りに隠しますか? 事件の早期解決の参考になると思うので教えて頂いてもいいですか?」「そっ、そんなのしたことねえから、よくわかんねえけど、あんたと同じようなところに隠すと思うぜ」
今のでわかったことがあった。男は過去を思い出す時、左上を見ると言うこと。心理学的には、過去をイメージする時は左上を見て、未来をイメージする時は右上を見ると言われている。どうやら男もそれに当てはまるようだ。男は盗んだものをどこに隠すかという私の質問に対して左上を見てイメージしていた。つまり、男は盗んだものを隠した時の状況を思い出し左上を見ていた。やはり、この男が犯人で間違いない。それからしばらくの間、世間話をしながら男の視線や動作を観察し続けた。そして事件現場に到着した。
「おい! 俺が犯人じゃないってわかっただろ。さっさと離しやがれ!」
「すいません。もうしばらくご協力お願いします」
「ふざけんなよ! お前ら警察がこれ以上開放しないって言うなら、訴えてもいいんだぜ」
黒澤さんの言葉に対し、男は大声を出して脅しをかけてきた。
「上城さん――」
黒澤さんは、不安そうな顔で私を見ていた。
「早くしろよ!」
「その必要はありませんよ。なぜなら犯人はあなただからです」
「おい、何言ってんだよ! あんたも俺が犯人じゃないって言ってたじゃねえか?」
「確かに言いました。でも、盗んだものが見つかってしまったので仕方ありません」
「どっ、どこにそんなものがあるって言うんだ?」
「黒澤さん、ここに来る途中にタバコの自動販売機がありましたが、そこの下を探してきてもらってもいいですか?」
「わかりました。直ぐに確認してきます」
「ちょっと待って下さい」
私は、黒澤さんの耳元であることをしてもらうよう頼んだ。そして5分くらい経った頃、証拠品を探しに行っていた黒澤さんが戻って来た。
「上城さん、ありました。被害者の言っていた特徴とピッタリのものが――」
「良かったです」