表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/40

賢いね、キミは(前編)

「ねーねーカッコいいオニーサン、俺たちと楽しいことして遊ばない?」


 僕の首に刺青の入った腕が後ろからかけられる。


 しまった。油断していた、気が大きくなっていた。


 いま僕は、衛兵もつけずに夜の街をひとりで歩いていたんだった。


「ごめんねお兄さん、今日は疲れたからもう休みたいんだ」


「え〜、つれないな〜、遊んでくれてもいいじゃん、ねぇ、さっきカジノで大勝ちしたオニーサン?」


 肩にずっしりと体を預けられる。上背も体格も明らかに向こうが上回ることが感覚でわかる。


 僕がむりやりそれを振り払い逃げようとすると、背中を突きとばされ仲間のひとりに足をかけられその場で転んだ。


「賢いね、キミは。俺たちのこと考えて、持ち運びやすいように金貨に両替してくれたんだね」


 その間に僕の上着を剥いだ刺青の輩の手には、僕の上着と上着に入れていた全財産が握られていた。

 奪い返そうと起き上がろうとしたところに、背中を踵で踏みつけられた。僕は地面に突っ伏した。


「賢いね、キミは。もしかしたら上着のお金が全財産だと勘違いしたところに残りをガメれたかもしれないもんね」


 皮肉のつもりだろうがそれが全財産だ。あと、ガメるってなんだ、それは僕のお金だろ。

 そんな僕にはお構いなしに靴、靴下、ブレーと次々剥ぎ取られては中を探られた。


「賢いね、キミは。こんなところに隠してもスグにバレるもんね」


 そういうと入れ墨の輩は僕の肌着をずらし、尻の穴のなかに指を入れてきた。うつ伏せのまま背中を踵で踏みつけられて抵抗しようにも抵抗できない。

 痛みとそれを越える不快感に身の毛がよだった。


 そしてなにより、


「賢いってなんなんだ、本当に他はなにも持ってない!」


 そのセリフをやめろ。僕はその言葉に洗脳されてきた。

 初等部の頃から試験でいい成績をとらされるたびに、いじめっ子に一方的に打ちのめされるたびに先生にそう言いなだめられた。

 親に勉強させられただけなのに、やり返さなかったのではなくやり返しきれなかっただけなのに。


 そのセリフを、不満だらけの仕打ちのなかで僕に一方的に我慢させ続けたそのセリフをやめろ。


「賢いね、キミは。そう言えば他のひとなら信じこむかもしれないもんね、ホントにこれしかガメてないって。ガメないでよ、俺たちのおカネ」


 聞く耳持たずか。でもここは引けるか。


「そもそもガメるってなんだ! その金は僕のだろ!」


 刺青の輩は相変わらずしらりとした顔をしている。


「賢いね、キミは。賢過ぎてつい言葉が難しくなってしまうのか俺には意味がわからないよ。

 だけど、弱者のモノは強者のモノだってことは弱者のキミが強者の俺に俺がよこせっつってるモノを平然とガメたままトンズラを考えてるってことは俺でもわかるからそこは安心してよね」


 ふざけるな、僕がいったい何をしたっていうんだ、なんでこんな仕打ちを受けないといけないんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ