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ご次兄さまの墓前にて

 拝啓ご次兄さま、お初にお目にかかります。


 拝啓ご次兄さま、皆が祈りを捧げております。


 拝啓ご次兄さま、貴方の街は、素晴らしいところでした。


 拝啓ご次兄さま、私は貴方の娘に、救われました。


 拝啓ご次兄さま、私は貴方の街で、恩を授かりました。


 拝啓ご次兄さま、私は貴方の街で、情を覚えました。


 拝啓ご次兄さま、私は貴方の街で、情を授かりました。


 拝啓ご次兄さま、私は貴方の街で、恩を覚えました。


 拝啓ご次兄さま、私は貴方の街で、友人に恵まれました。


 拝啓ご次兄さま、私は貴方の街で、仕えるべき主君に恵まれました。


 拝啓ご次兄さま、私は貴方の街で、骨を埋めるべき居場所に恵まれました。


 拝啓ご次兄さま、どうか私をお許しください。


 拝啓ご次兄さま、どうか私に恩を返させてください。


 拝啓ご次兄さま、どうか私に貴方の街を護らせてください。


 拝啓ご次兄さま、私は貴方様の御尊顔を存じません。


 拝啓ご次兄さま、ですが私に祈らせてください。


 拝啓ご次兄さま、私は貴方様のご冥福をお祈りします。


 拝啓ご次兄さま、どうか安らかにお眠りください。




「お兄ちゃん、ちょっといい?」


 どうした? ガラにもなくかしこまって。


「お兄ちゃん、ホントに変わっちゃったよね」


 ん? なんか変か?


「逆。『変じゃなくなっちゃった』の。ちょっとまえまで狂ってたのがウソみたいに」


 ……そりゃどうも。


「あたしさ、もう要らないよね」


 そんな酷いこと、思ってもない。おまえは頭のなかがわかってんだろ。


「もう! 『要らない』って言ってよ! お兄ちゃん、伯母ちゃんのこと、……好き、だよね?」


 ああ。言いにくいが。


「あたし、お兄ちゃんと伯母ちゃんに、幸せになってほしい。

 でも、お兄ちゃんと伯母ちゃんが幸せになるとこは……、見たくない」


「あたしだって女だもん。理屈より、気持ちをわかって、お兄ちゃん」


 そっか。ごめんな。


「そのかわりってわけじゃないけど」


 ん? まえに娘として生まれ変わらせてくれって言ってたあれ?


「それも、もういいよ。そしたらまた嫉妬しちゃう」


 じゃあどうすれば?


「墓、建ててよ。あたしのも。あの森に」


「お兄ちゃん、いまパパに祈ってたじゃん、感謝してたじゃん。いまはパパがうらやましい」


「だから、お墓建てて、あたしにも祈ってよ。『娘に救われた』んでしょ? パパの娘に」


 いいのか、それで。


「……いいよ。あたし、『隠し子』だったんだもん。誰かひとりにでも感謝されれば、それだけでも上々の人生だよ」


 わかった、絶対に建てる。


「うん、ありがと。今度こそホントにホントにお別れだね、お兄ちゃん」


 ああ、今までありがとう。おまえも、安らかに眠ってくれよな。


「おい! 奉公人! いつまでボーっとしてんだ? お前は待たせていい立場じゃないだろ!」


「はい! 直ちに参ります!」


 ホントに今のいままでありがとうな。おまえにしたこと、今は悪いと思ってるよ。

 おまえが、思えるようにしてくれたんだ。


「そう言うな。あ奴のほうが、我々より早く彼の街に来たのだ。祈ることも多かろう」


「……例えば、『お義兄さんと呼ばせてください』とかですかい?」


「茶化すでない! 無礼であるぞ!」


 みんな速いよ、もう馬車に乗ってるんだから。


「遅い! あまり妾を待たせるでないぞ!」


「はい、申し訳ありません……」



 あーあ、お冠だ。でも決めたんだ、このひとたちと、生きるって。


「俺はあの街のために生きる、いつかあの街に骨を埋めるその日まで」


 ってね。




―― Survive〜回復魔法しか知らない僕は生き延びる〜 finished ――


 

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