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試し斬り

「はっはっは、それは頼もしい。さて、剣のほうも覚えちまおうぜ」


 嬉しいね、できることが増えると。あと、それを褒めてもらえると。



 ―――――――――――――――――――――



 「5千!」


 あれから半年ほど経った。俺は掃除と薪割りの合間の時間のほとんどを、剣の修練と魔法の修得に注ぎ込んだ。

 水車と城の再建も無事完了し、その間街は平和だった。


「しかしおまえもなかなかに無茶苦茶だよな。身体が壊れるたびに魔法で回復させながら修練なんてよ」


 別に、初めてじゃないから。あと、一時期自分の腕を食べて糊口をしのいでたこともあったから。


「せっかく食客させて頂いているのに、まだまだ未熟ですから。いち早く一人前になりたいんです」


「お兄ちゃん、いまなら木の枝くらいは拳で折れるかもよ!」


 茶化すなクソガキ。


「半年で朝に2千、午後に5千だからな。まぁまぁ早いほうだとは思うぜ」


「ふむ、そこでだ」


 姫さまが髪をいじりながら現れた。頭で考えや発言をまとめているときの癖だ。


「明朝までに2日分の薪を用意するがよい。絶対にだ」


「2日ぶん、ですか?」


「ふふん、理由はそのときになれば自ずとわかる。もっとも、汝がそれに値するものでなければ、この話もなくなるがな」


「……おい、奉公人。メシのときは呼んでやるから、今のからもう薪割っとけ」


 なんだろう、とりあえず薪は割っとかないといけないみたい。


 薪割って夕食食べてまた薪割り。量的に夜通しやってやっと終わるくらいの突貫工事。

 さらに修練のあとで腕がガクガクする。


 でも、やるしかない。



「おい、もう準備しろ。とっとと風呂に入れ」


 俺は衛兵さんに起こされた。どうやら気絶していたらしい。


「メイドよ、足りるか?」


「はい、十分です」


「ふむ、では行くとしよう。速やかに準備するがよい」


 俺は大急ぎで風呂に入り着替えて馬車に乗った。


「ちなみにどちらへ向かわれてますか?」


「あ? 鍛冶屋に決まってるだろ」


「鍛冶屋、ですか?」


「ちょっとは察しろ」


 衛兵さんは、ずっと姫さまの横で険しそうな顔をしていた。


「よかったな、おまえも自分の剣を持たせてもらえるんだ。久しぶりに見るがガンバってるんじゃねえか」


 団長さんが、手綱を握りながら嬉しそうにこちらを見る。そういえば、団長さんと顔合わせるのってあれ以来だな。


「あんま言うな、こいつが調子に乗る」


「ふむ、まだ決まったわけではないぞ」


 姫さま?


「こやつが本当に日々の修練を血肉に換えきれておったらだ。役立たずに武器は持たせれぬ」


 手厳しいな。




「降りるがよい」


 鍛冶屋に着いた。姫さまのご実家の近くにあった。


「暫くぶりだな。衛兵用の剣を2振りと、兜を分けてもらえぬか?」


「お易い御用です。兜は安物で構いませんか?」


「ふむ、よいだろう」


 なかを見ると同じ両手剣が何本もあった。


「ふふん、我が実家は剣の保ちが悪いのでな。城付きの鍛冶屋が予備を常備しておるのだ」


 あの激しい修練なら、剣もすぐ傷むだろうな。


「奉公人よ、あの兜を両断してみせるがよい。格好だけの安物すら割れぬようでは、剣を持たせても無意味であるからな」


 俺は左手に剣を持ち、右手を添えて真上に構えた。

 一発勝負だ。気合を入れろ。俺は兜から数歩距離をとった。


「キィェェエア!」


 全速力で踏み込み、肩甲骨を回しながら腰を落とし、剣身を兜めがけて全力で叩きつけた。


「アアアア!!」


 脇を締めて斬撃の反動をすべて受け止め、全体重で押し潰すように押さえつけた。


「ふむ、こんなものであろうな」


「まずまずだな」


 剣はヘルムを半分ほど割り、鼻先と後頭部が入るであろう位置で止まっていた。


「お兄ちゃん、衛兵さんは真っ二つにしてたよね?」


 いうなよ。


「ふむ。この兜をもう3点ほどもらおうか」


「ありがとうございます」


「よかったな、奉公人。及第点だってよ」


 なんとか認めてはもらえたみたい。


「誉められる点としては、一撃で行動不能とさせれるであろう威力を有していた点、および剣筋に淀みがなかった点だな」


「であるが、まだまだ半人前だ。遅くとも今から半年後、収穫祭までに必ずや修得せよ」


 ……姫さまもわかっておられる。備えるべき脅威に。


「わかりました。ところで、この兜はもう処分してもいいですか?」


「ふむ。職人よ、この鉄はもう使えぬか?」


「姫さま、そいつはクズ鉄です。もう材料としても使えませぬ」


「お兄ちゃんは、クズ鉄の兜も割りきれなかったんだね!」


 そっか……。俺はこの半年、いろいろ頑張ったんだけどな。


 例えば、こんなのとか。


「ボルケーノ!」


 火柱が上がり、兜が蒸発した。


「姫さま、これは!? ご次兄さま以外が使ったところを初めて見ましたぞ!」


 手段さえ選ばなければ、俺はもう蛮族を仕留めれるよ。


「ふむ。では、剣の方面でも精進するがよい」


 俺はやってやる。俺が決めたんだ、貴女の期待に応えてみせるって。

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