表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/40

謁見

「あぁ、昔は敵国の要塞だったからな。

 領主さまのご実家の先代領主さまが、戦争の際に矢を何本受けようが腹を刺されようがいっさい怯まず最深部まで一気に駆け抜けて陥落させた。

 その後先代さまが、国王さまからあの地を安堵されて今に至るわけだ。

 当時俺はまだ新兵だったのもあって、回復薬を何本も腰からさげて猪突猛進していくサマは鮮烈だったよ」


 なかなかの武勇伝だが、問題はご令嬢さまだ。話の通じる相手でありますように。




 団長が先導するなか城門をくぐり、街なかを進む。

 途中に団長の配慮で酒場に寄った。団長オススメのシードルをノドに流しこむと、爽やかな酸味のきいたリンゴ味が口のなかに広がった。イスに座ったついでに軽くストレッチすると全身の関節がバキバキと音をたてた。


「よし、元気出たか? もし領主さまのご実家でブッ倒れたりしたら目もあてられねぇからな」


 それを言うならひと晩寝てから謁見したいもんだけど、そんなのんびりはしてられないもんな。向こうはパン屋さんがひとりで警備してる状態だし。


「あまりカネに困ってはなさそうだが、この飲み代は俺が払ってやる。ただしそのかわり、交渉はしっかりとガンバってもらうからな」


 なにも成果を得られずに来た道をまた3日もかけてトンボ返りなんてこっちから願い下げだ。なんとしても交渉を成功させついでに帰りの馬車の要求も飲ませてやる。




「よお、久しぶりだな」


 団長が門番と挨拶をかわす。


「お久しぶりです。あれ? お一人でここまでですか? 街は大丈夫ですか?」


「その街が一大事でな。ご次兄さま一家が逝去なされ、現在領主不在なんだ。その旨で相談があってここまで来た」


「ご次兄さまが逝去ですか!? そちらの方は?」


「旅人だ。一家殲滅の犯人のひとりから仇を討ってくれた」


「わかりました。どうぞお通りください」




「長旅ご苦労であったな。息子がやられたとな?」


 体格のいい強面の老人に出迎えられた。


「はい、城の自室にてクロスボウで脳天を撃ち抜かれ逝去なさられておりました」


「で、主の盾たるそなたはなぜ主が殺されたにもかかわらずのうのうと生きておるのだ?」


 眼光鋭く睨みつけながら凍てつくような厳かな声で聞いてきた。


「も、申し訳ございません……。異変に気付き城に駆けつけたときにはもう全て手遅れにございました……」


「たわけ! 何のための衛兵だ! そなたは置き物か! たるんでおるなどという話ですらないぞ!!」


「おっしゃる通りです……」


 凄まじい剣幕と声だ。おっかないが助け船を出したほうがいい。


「お初にお目にかかります。団長さんはご次兄さまの命令に従ったからこそ、現場に駆けつけることが難しい状況にありました」


「ほう? ところでなぜ貴様はここにおる?」


 こわいな……。たったいま団長がどやされるのを見たばっかだもんな……。


「申し遅れました。私は旅人にてございます。

 先日まで、ご次兄さまの統治なさられていた街に滞在させて頂いておりました」


「では、旅人風情がどのような知ったクチをきくか、一応は聞かせてもらおうか」


 きっついな……。聞く耳持ってもらえただけ良しとするか。


「ご次兄さまは、『旅人が王都までの中継地として使いやすい街』を目指しておられました。

 そこで、この方を宿屋の店主兼街の警護に、もうひとりのそちら様出身の衛兵さんもパン屋の店主兼街の警護に配備なさられました」


「街なかにはもうひとり婿入り先に代々仕えられていた衛兵の方を巡回させ、近衛には婿入り先の元団長さんとご新規の衛兵ふたりを配置なさられておりました。

 その4人がご次兄さまを裏切り、殺害し金品強奪しうち元団長と新兵ふたりが逃走し今に至ります」


「で? あとひとりは?」


「街なかに潜伏し、この旅人を襲撃した際に返り討ちにあい死亡しました」


 先代さまは眉間に皺をよせ、気難しい顔でなにかを納得していた。


「あの愚か者が……。なぜ近衛を身内で固めなかったのだ。外様が領主を務め城内にひとりで居ればいつかそうなっただろうに。

 あ奴は昔からお人好しが過ぎたのだ。他所者に好きにされたことに、損得関係なく反感を抱く可能性など想定すらせんかったのだろうな」


「ところで旅人よ」


「はい」


「息子の街は……、どうだった? 過ごしやすかったか?」


「はい、団長さんも宿屋の店主として丁重にもてなしてくださり、街も必要なものを全て買いそろえることができる素晴らしい場所でした」


「そうか」


「お父さま、わたくしにもその方の話を聞かせて頂けませんでしょうか?」


 なにかを噛みしめるような顔の先代さまの後ろから妙齢の女性が現れた。


「いいところに来た。察するに此奴らが本当に用があるのはおまえだろうからな。

 あとはおまえが話を聞いていてくれ」


「はい、承知しました」


 そう言うと先代さまは奥へと踵を返していった。


「二方とも足労であったな。いつまでも玄関で立ち話とあっては辛かろう、案内するから付いてまいれ」


 この人がご令妹さまかな? いまのところ特に問題はなさそうだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ