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金縛り

「ま、その血筋の最後のひとりを殺しちゃったのもお兄ちゃんなんだけどね!」


 うるさいな、どうせ隠し子だっただろ。


 だけどもう一泊できるのはありがたいな。夜道を行くアテもなく血まみれの格好で歩きまわるより、日中に情報を手にいれてからのほうがいい。


「風呂も沸かしてあるから入ってってくれ。部屋を血まみれにしたらさすがに出禁だからな」


 ……これだから田舎は。プライバシーってものはないのか。



 俺は宿屋に戻り、店主に服を預け風呂にはいって部屋に戻った。肌着だけだと肌寒かったがしかたない。

 とはいえベッドに横になるや否や身体がズシリと沈むように重くなった。


 一日いろいろあったから、思ったよりも疲れてたんだな。俺はそんなことを思っているうちに眠りについた。


「お兄ちゃんお疲れ〜♪」


 休ませろよクソガキ。俺は腹のうえに馬乗りになったクソガキを落とすべく寝返りを打とうとしたが、体が全く動こうともしなかった。このガキ金縛りかけやがったか。


「え? あたしはなにもしてないよ?」


 いわゆる「入眠時レム睡眠」ってわけね。脳がストレスを感じてると、寝ても脳が動いてるまま体だけ寝るやつ。

 確かにストレスならいま腹の上に乗ってるもんな。


「ひっどいな〜お兄ちゃんは。せっかくひとが『今日はひさびさにカッコよかったな』って見なおしてあげたのに」


 俺がカッコいいのはいつもだろ。


「あまり調子にのると、あの森にいくまでの記憶掘りかえすよ?」


 はいはい悪うござんした。ったく悪霊めが。


「でもよかった。お兄ちゃんが、卑怯者で、臆病者で、横着者で。じゃなかったら今ごろ死んでたじゃん」


 それいいことなの?


「だってさ、あの元衛兵との違いって、不意打ちに面くらった相手をそのまま仕留めにいく卑怯さと、完全に息の根を止めるまで反撃の可能性にビビる臆病さと、他人の命を奪うことに何の抵抗もない横着さだったじゃん」


 ……ただ必死だっただけだよ。なりふり構えなかった。


「そんなふうに言わなくていいじゃん。ママも、ご主人さま……パパも、城の他のひとたちもみんな殺したうちのひとりに命狙われたんだよ。

 それでお兄ちゃんはいま生きてるだけじゃなくて返り討ちにしたじゃん、それすごいよ」


 そういうと女の子は腕のなかに潜りこんできた。


「今日のお兄ちゃんは……カッコよかったよ」


 夢のなかなら、霊体って食べれるのかな。


「もぅ……、そんなにツンツンしなくてもいいじゃん……。

 今日くらい、横で寝ててもいいじゃん……」


 俺は肌寒いベッドのうえで、人肌の温もりを感じながら朝まで泥のように眠った。




「お、兄ちゃん起きたか。外出歩くのにそれじゃあんまりだからこれでも着て行け」


 朝飯をもらいに下におりると店主の私物らしきチュニックを渡された。ぶかぶかだけど無いよりはマシか。


「そういえばさ、この街って、これから野盗に襲われたときとかどうすんの? 領主も衛兵ももういないってバレたら好き放題されると思うけど」


 素朴な疑問だった。


「衛兵はいないわけじゃないんだけどな、ちょうどその辺について考えがあるんだ。

 市場までついてっていいか?」


 余計なこと言ったかな。

 更新が遅くなってすみません。

 今週からはまた通常進行の予定です、今後ともよろしくお願い申し上げます。

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