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夢枕

「やっほ〜♪ お兄ちゃんお元気〜?」


 ……僕も人の子だな、食べて殺したことに対して夢に出す程度には良心の呵責があるようだ。



「なにいってんのよ、お兄ちゃんにひどいことされたから化けてでてきたの!

 お兄ちゃんは他人をどう扱おうがなんともおもわない人間のクズじゃん!」


 つまり夢枕に立たれたわけか。


「そ〜ゆ〜こと♪ これからは、ずーっとあたしと一緒!」


 憑き殺すつもりか?


「う〜ん、それもかんがえたけどぉ〜、べつにいっかな〜って」


 なんで?


「『賢いね、キミは』」


「やめろ!!!!」


 僕は思わず起き上がり叫んだ。その台詞をやめろ。


「えへへ、お兄ちゃん怒っちゃった?」


 起きたら起きたで頭のなかに語りかけてくる。それよりそれをなんで知ってるんだ。


「お兄ちゃんに取り憑いたら、お兄ちゃんの頭のなかぜーんぶ見えるようになっちゃった。

 いまもこうして、お兄ちゃんが頭に言葉を思い浮かべただけで会話できてるでしょ?」


 それ、いま現在の思考だけじゃなくて過去の記憶もか?


「うん! お兄ちゃんがすっぽんぽんでみんなのまえで蹴られてげーしちゃったのもしっかりと!」


「だからやめろ!!!!」


「さっきからうるせーな!」


 ドアを蹴られどやされた。ドアを開けたらほかの宿泊客のようだったから謝った。


「……って、おまえひとりか? ちっ、ついてねーな、朝までキ○ガイが隣かよ」


「あ〜あ、お兄ちゃんおこられちゃった」


 キ○ガイってなんだよ、こっちは祟られてんだよ。憑き殺されそうだよ。


「賢いね、キミは。賢いからそんな殺しかた考えれるんだね」


 やめろよ。


「うん、そうだね。このままお兄ちゃんがむかし部屋に閉じこめられてて、なんにもできなくておカネで釣る以外のトモダチの作りかたができなかった話とかしたら発狂しそうだもんね」


 殺すぞ。


「もう殺したじゃん。あたしなんにもわるいことしてないのに」


 ……くそが。


「そろそろいっかな、お兄ちゃんだいぶ参っちゃってるし。そうそう、お兄ちゃんはお兄ちゃんでだいぶ大変だったんだね」


「それにいっぱい勉強してて、だからあたしお兄ちゃんに取り憑いたらいろんな言葉覚えちゃった。

 すっごい量だからまだあたしべんきょーちゅー」


 なにがそろそろいっかなだ、やっぱり憑き殺す気だろ。


「ひどいなー、せっかくあたしお兄ちゃんのこと許してはあげれないけど、おとがめはしなくていいって思ってあげてるのに。

 お兄ちゃんのこといろいろ知ったからずっと傍に居てあげようっていってるのに」


 はぁ?


「お兄ちゃん、あの日以来ひとの目を見て話せなかったのが、この小さな女神さまのおかげでそれができるようになったんだよね?」


 口は災いのもとだな。いや思っただけでダメなのか、厄介だな。


「それはそれでひどいけどね。

 あたしがはじめからびびってたからお兄ちゃんはあたしの目だけはみて話せて、それでも人前ではびびっちゃったからお兄ちゃんはその腹いせに怖がるあたしに乱暴して、あたしにカッコ悪いとこ見られてプライドが傷ついたからあたしを殺して、その間あたしが弱すぎて抵抗できなかったからお兄ちゃんに自信がついたって」


 いやだからそんなことされたら離れたくなるだろ。


「でもとくべつ大サービス! この女神さまがそんな残念なお兄ちゃんをこれからずっと加護してあげまーす!」


 ……なんで?


「だって、あたしが居なかったらこれから先もお兄ちゃんずっとひとりだよ? あたしも生まれてずっと友だち作れなかったからその苦しみ知ってるよ?

 それに、お兄ちゃんがそんなんなのって、いままで周りから愛されなさすぎたからじゃん」


 ……だからって……


「そのかわり! お兄ちゃんいつかステキなお嫁さんと結婚してよ!

 そしたらあたし、お兄ちゃんの娘に正しく生まれてちゃんと生きるの!」


「あたし、今度こそ『死ぬまえに生きたい』なー。

 あたしを食べて殺した責任はそう取ってくれればいいよ、ね? 未来のお父さん?」


 やれやれ、やっかいな悪霊に取り憑かれたもんだ。

 ホント遠慮もなく弱いところをつくよな。


 だけど、取り憑かれたものはしかたないよな。 

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