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落ちていた肉に懐かれた

「ママのご主人さまのお屋敷が盗賊に襲われたの。


 窓が割られる音がして、ママがドアから部屋の外をみたら奥さまも執事さんも他のメイドさんもみんな殺されてた。


 ママが盗賊の目を盗んでその袋を持たさせながらあたしを窓の外に放った。


 ママも出ようとしたところで盗賊に見つかって、ママは捕まえられて服を脱がされてた。


 あたし、こわくなってママを置いてこの森まで逃げちゃった」


 盗賊に気付かれてないといいな、もし口封じのために皆殺しにしてたとしたら気付かれてたらここまで探しに来るかもしれない。


「なんでこの森に?」


「ママが言ってたの。街のはずれの森は猛獣がいないからそこでしばらく身を隠すって」


 街のはずれ……。この娘は森のすぐ向こうの街からきたのか。


「だからお兄ちゃんの姿をみたときはビクッとしちゃった。終わったんだなって。

 でもお兄ちゃんは襲ってこなかった。足も治してくれた。

 血が出て痛くて、でもそれよりもこわくてこわくて必死で走ってた足を。

 ありがとう、お兄ちゃん。クルミもおいしいよ」


 女の子は差し出した非常食の胡桃を遠慮もなく食べていた。今後いつリスが巣に戻る瞬間に出くわすような幸運にありつけるだろう、そのリスは巣のなかの胡桃ごと素焼きにしてやって食べたから二度と営巣しないだろうし。

 ただ、この金貨が森のすぐ先の街で使えるのは吉報だ、ナイフや鍋が手に入ればずいぶんと暮らしやすくなる。パンを買ってもいい。僕は質問を続けた。


「それで、お母さんはお屋敷ではなにを?」


「メイドさん。お部屋にいることの多いご主人さまにお茶やお料理をだしたり、洗濯したり、ご主人さまが外に出てらしてるときにお部屋をおそうじしたり、ご主人さまをお世話したりするの」


「他の、ご主人さまの家族とかは?」


「んーと、奥さまに、お子さんがふたりに、執事さんに、ほかのメイドさんが何人か。でもご主人さま以外とあたしは会わなかったから顔はわからないの」


「ご主人さま以外と会わなかった?」


「あたしは、『かくしご』なんだって。だからママの部屋から出れられなかったの」


 これはまた吉報だ。盗賊が存在を把握していない可能性が高い。


「ありがとう、ちょっときみの街に行って刃物と食糧買ってくる。きみは念のためこの森に居て、そうだその間そこの川で水浴びでもしててよ」


「お兄ちゃん行っちゃうの?」


 意外だ。吊り橋効果でもう懐かれたか。


「すぐに戻るよ。それに、僕がいないときじゃないと水浴びできないだろ?」


「お兄ちゃん、行っちゃダメ」


 せっかくカネが手に入ったんだ。ナイフと保存食がほしい。


「こらこら、レディがはしたないよ」


 女の子は、胸もとへとすり寄ってきた。


「お兄ちゃん、あたしを守ってよ!」


 勘弁してくれよ。

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