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道のともしび ~こころのトゲをいやす十のメロディー~  作者: ユウさん
散らばったメロディーを探して
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深く刺さった〈トゲ〉

少年少女たちの旅立ちの時がやってきた。


マスターは、一人一人に声をかけて、頭の上に手を置いて、こころを込めて祈った。


すると、一人一人のダイモンが大きく脈打ち力を得るようになった。


ソラは、勇気


ウミは、優しさ


レイは、知恵


ハルは、賢慮


それが、与えられた力であった。



しかし。


彼らは気が付いた。


ダイモンの光が、彼らを照らすと、それまで気が付かなかった〈トゲ〉が深く自分たちのうちに刺さっていることに。


その〈トゲ〉の刺さったところからは、絶えず血が噴き出し、痛みがあったが、

この世界に生きる多くの人がこの〈トゲ〉の存在に気が付かず、気にも留めずであった。


それが、苦しみとして自覚されるようになると、はじめて人は呻き、足掻きをはじめるのだが、結局は気にされなくなると、忘れてしまうことで、〈トゲ〉からは解放されたと思い込んで安心するのであった。


崖の下の今にも千切れそうな蔓にぶら下がりながら、それを忘れて、そこから垂れてくる蜜に夢中になる人のごとくに。



「な・・・なんなんだ、このトゲは?」

ソラは、驚いた。


ハルだけが、もともとそうだったといわんばかりに落ち着いてその〈トゲ〉を愛でるように味わっていた。



「ダイモンの力を解放するっつーことはや、

君たちのうちに深く刺さっていた〈トゲ〉を抜くことでもあるんや。


〈永遠の君〉とひとつになること。

そうして永遠の安心と本当の幸せに至るまでには、この〈トゲ〉が邪魔になっとるんや。


この〈トゲ〉のせいで、人間は〈永遠の君〉を見えなくなり、聞こえなくなっとる。

君たちで、その〈トゲ〉の抜き方を見つける旅に出てほしいんや。」


「〈トゲ〉の抜き方・・・。」


「そう。

それは、しいては、君たちの〈こころ〉の深い水脈にまで至る道にもなるはずや。」


「道・・・素敵な響き。」

とウミ。


レイが尋ねる。

「〈トゲ〉は確かに、苦しくて、どうしようもない・・・。

だけど、決して、ただ無条件に悪いと言うことだけじゃないのね?」


「ええことに気が付いたな。

氷が溶けたら水も多くなるように、深く刺さった〈トゲ〉のあるところにはまた『ええこと』も増えるもんなんや。

まあ、ボチボチやんな。

ボチボチじゃなくてもええけれど。


道はあるよ。


ほな、また。」



四人は、名残を惜しみながら、出発した。



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