寄り添い
夜の帳の中に、薄暗く光るものは星や月の明かりだけではなかった。
ウミのダイモン、マリの放つ暖かく包み込むようなピンク色の光。
その光に包まれる感じは、誰もがきっとはるかむかし、記憶にすら残っていないほど前、
それぞれが存在するはじめの時からその人を包んでいた光に違いないと感じられた。
「ねえ、ハル。
どうしたの?」
ウミが聞く。
ハルはウミの方を振り返った。
その瞳はあまりにも溢れんばかりの慈しみに満ちて、輝いていた。
ハルは思った。
「オレとこの人は一緒にいていい人じゃない。
なぜなら、なぜなら、オレはこの人の美しい心を汚す罪を犯してしまうだろうから。
オレがただここに居るだけで!
そしてオレはさらにこの場にはいられなくなるだろう。
オレは、〈可哀想な人間〉〈純粋な被害者〉などではないのだ!
憐れみをかけられ、同情を受けるべき存在ではなく、
エゴと恐れに満ち溢れたひん曲がった人間だ。
心の中では、ああ、たしかに真実や愛を求めてきたつもりかは知れぬが、全ては所詮醜い自己中心的な欲望でしかない。
ああ、しかし、オレは覚えてもらいたい。
それでもなおこの期に及んで憐れみをかけてほしいのだ。
だけど、この女にオレの孤独が癒せる、理解してもらえるなどと期待するな!
なぜなら、彼女のこころは穢れも罪も知らず、ただ祈りと愛だけに満ちた、誰も踏み入れたことのない雪のように美しいのだから。」
ハルはこう答える以外なかった。
「何でも、ない。
何でもないよ。大丈夫。」
自分でも何を欲せばいいのかすらわからない。
わからないけれども、ただ自分を否定し苦しめる以外にないのだ。
誰も助けられはしない。
孤独!
周りに多くの人間がありーーーああ、たしかに彼らに人の心はあり、血も通っているに違いないーーーそのことがわかるのに、自分はどの交わりの中にも存在できないし、開くべき心を持っていない。
自分は自分としてそこに居ることができない。
ああ、そうだ。
寂しさを誤魔化そうと、無理して自分を押し殺し、群衆の中に交わるくらいなら、たとえ孤立してでもオレはオレでありたい。
それがあの腐った国でオレが誓ったことではなかったか?
「そっか。
ハルとはそういえばまだあんまりじっくりお話聞いていなかったよね。」