合流
「キットカットォォォ!」
〈光の刃〉が飛んできて、兵士たちを撃った。
その光の刃の飛んできた方向を見ると、ハルと同じくらいの年のバンダナをした少年がいた。
「こっちに向かって走れ!」
バンダナの少年は叫んだ。
ハルは訳も分からず、そちらに向かって走る。
それでも、兵士たちは追いかけてくる。
「帝国本部から直々に神聖なる王国を破壊せんとするテロリスト一行が近づいているという報告があった。
また、完全に闇の支配下に置かれ、元上級臣民であったが剥奪され、〈救済〉を執行されたハルであるが、それが不徹底であったため、〈救済〉を完全にせよとの命令があった。
・・・それに、この大命を遂行することが出来れな、我々の身分も一気に上がる。
つまり、来世での幸福も約束される。
しかし、もし失敗すれば、左遷し、首のリングの色も格下げなのだ・・・。
愛を持って、暗黒は処分せねばならぬ!」
「ハッピーターン!」
兵士たちを一陣の風――のようなもの――が襲った。
兵士たちは、足場を失い、城壁の近くまで飛ばされた。
腕を広げた少女の上空からその風が吹き荒れている。
「もう大丈夫だよ!おいで!」
そうして、ハルは追っ手を逃れ、その少年と少女の元までたどり着いた。
「まったく・・・王国を破壊せんとするテロリストって何よ・・・?
まったく、いやになっちゃうわ。」
もう一人の聡明そうな少女が言う。
「よくがんばったな。ハル。もう大丈夫。」
少年少女たちをまとめていた〈その人〉はなぜか、ハルの名前を知っていた。
「あ、ありがとうございました。どなたかは知りませんが。
それにしても、なぜあなたたちはオレを・・・。」
「私は、マスター・エッグタルト。
君の〈ダイモン〉がいろいろ教えてくれてん。
この人たちは、私の〈友人〉のソラ、ウミ、レイっつーねん。一緒に旅の最中や。
年齢的には結構近いんちゃうかな?
よろしゅうな。」
「オレを助けてくれて・・・ありがとう。
あ・・・それに・・・君たちは・・・。」
少年少女四人の胸が輝きだしたかと思うと、それぞれのダイモンが一堂に集まり、そこにえもいわれぬ調べが響き渡った。
「やっと・・・揃った。
ダイモンを持つ少年少女たちが・・・。」
ウミがつぶやく。
「そうか・・・みんなオレと同じようにダイモンがついてたんだな。」
マスターはしみじみとその様子を見ていた。
「・・・もう・・・大丈夫。
もう大丈夫や。」
マスターの全身が白い光を発したかと思うと、それはあたり一面に広がった。
ハルは、自分の心と体がとても軽くなるのを感じ、深い安心を覚えた。
「もう、君を傷つける奴も、支配する奴も、脅す奴も、恐れさせる奴もおらへんで。ハル。」
ハルは生まれて初めて、目の奥に何か得体のしれない暖かいものがこみあげてくるのを感じた。
なんだこれは。この不思議な感覚は。
マスターの光は、壁の近くまで届いていた。
遠くでは兵士たちが倒れて動けなくなっていた。
その光が彼らを縛り付けているのか?
いや、正確には彼らの背には、見えない大きな石がのしかかっていたようだった。
光はその巨大な石を見えるようにしたに過ぎなかった。
そして、その石こそが兵士たちを動かしていたものだった。
自由と愛という光に照らされてしまった瞬間、彼らを動かしてしたものが彼らを動けなくしてしまったのである。