強く
ハルはますます自由に振る舞い、自分を表現することを始めた。
ハルは目を輝かせて日々を過ごしているだけであった。
積極的に、色付きリングの階級の人々と交わりを持った。
ちなみに、階級は上から順に、白、オレンジ、青、黄、緑、茶、黒であり、それぞれの色の中にも細かく階級が分けられている。
彼らはトルテ王国を支えるために、汚く、危険な仕事に従事していた。
ハルは彼らと食事や財産を分かち合うことにした。
「お前は空気を読めよ。」
「そんなわがままが認められると思うな。」
「そんなことばっかりしていればお前は孤立して生きていけなくなるぞ。」
そう言われたが、トルテ法に反することをしているわけではないのでなかなか罪状もでっちあげられない。
「ハル君、近頃変わったわね。」
ボンゴレビ・アンコが屈託のない笑顔でそう語る。
「ゴールドのリングをつけてから?」
「まあ・・・そうかもしれないね。」
「何か、男らしくたったっていうか・・・。」
アンコはハルに近づき、その手を取った。
「どうしたの?何があったの?」
「オレは・・・運命を愛する事を決めたんだ。」
「そう・・・。
ハルはなんだか・・・強くなったね。」
「そんなことはない。弱い。弱いよ。だけど、そんな弱さも含めてすべてと少なくとも全身全霊で立ち向かうことにオレの生命があると考えている。」
「あ・・・・」
アンコの声が震えているのがわかる。
「そ、それは、あなたが特別な存在ってこと?」
「なぜそう思う?」
「ちゃんと、宇宙皇帝陛下様の言うことを聞かなきゃ・・・。」
「今まで言われてきたことのすべては頭に入っているよ。
あまりにも不条理で押し付けがましい法だと思う。
起こることの全ては自分に原因がある、自分の責任・・・。
しかし、そうやって押しつけられて刷り込まれてきたことを、あえて今やオレはオレ自身の矜持として受け入れている。
そして、そのことによって運命を超克でき、不条理を頭から被ることによって状況の中で自由なのだ。」
「言ってることがよく分からない。
つまり、しっかり宇宙皇帝陛下に従っているってこと?」
「まあ、そういうことだな。
しかし、そうでいて、それを超えたところで、オレは生きている。」
「ハル・・・あなたは強い・・・強いよ。
ハルだから、そんなことが出来るんだ。
だけど、出来ない人にとっては・・・見捨てられて、置いてけぼりにされたみたいで・・・。
だったら、出来ない人はどうしたらいいの?
重荷だよ。あまりにも辛いよ。」
「他人がどうかは知ったこっちゃない。
ただ、オレはこうすると決めたんだ。
誰かの姿を見てとか、誰かと較べてとか、誰それに言われたからとかそういう事じゃあない。
この生き方や考え方を、他の人に強いるつもりもないしな。」
アンコはハルの手を強く握った。
「ハル・・・私を置いていかないで・・・。
実は、私、あなたのことが好きなの。」
「え・・・?」
「運命なんかじゃなくて、私を愛して。
私のために、そこにとどまって。
あなた一人だけプラチナになるの?嫌だよ、そんなのは。
一緒にゴールドにとどまろう?」




