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道のともしび ~こころのトゲをいやす十のメロディー~  作者: ユウさん
ザワーク・ラウト
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来客

「闇からの使者・・・誘惑する者共が来たようだ。」


ザッハ・トルテは塔にいた兵士から報告を受けた。


「ペペロン・チーノ!」


「何でしょうか?偉大なるザッハ・トルテ宇宙皇帝陛下様。」


「知っておるな。

光が降りたつところ、また闇も必死でそれを消そうと足掻く。

この神聖なるトルテ王国も世界中に張り巡らされたゾーラ率いる秘密結社、闇の組織に狙われているのだ。」


「陛下。それに対抗するための、忠実なるトルテ王国のダミー団体である光の同胞たちも草の根のごとく世界中に広がっているではないですか。

そのおかげで、世界中から人を呼び集め、ゾーラから守り、誰もが陛下を敬う理想郷をいまここに建設することが出来ているのです。


それに、陛下はその慈悲深さから、この愛する民を断固ゾーラの支配から守らんとして堅牢なる城壁を作られたのですね。

何を心配なさることがあるのです。」


「闇の秘密結社の陰謀を甘く見てはならぬ。

奴らは四方八方から我らを滅ぼさんとして攻撃を仕掛けてくる。

ゾーラの軍勢はあまりにも狡猾なのだ。

この前のなんとかという劣等人種に引き続き虫が紛れこもうとしておらぬか。」


「なんとか・・・というと、メイという劣等人種ですね。

あれは、無事ゴールド臣民のハルが救済いたしました。」


「ゾーラに汚染された〈世界〉の獣のような人間は滅ぼされなければならないのだ。

知っておるな?

ザッハ・トルテの子どもである選ばれし神聖なる民こそ宇宙の支配者たるべきなのだ。

しかし、その血筋はこの世界にはびこるゾーラによって汚された獣の民と陰謀によって交わり、そして世界は今のような闘争と破壊の絶えない地獄のようなありさまになった。


世界を平和にし、清らかな愛による世界を作るためにはどうすればいいか。


宇宙規模で審判が行われる。

それが次元上昇だ。


それまでに、ゾーラに汚染された劣等人種どもを世界から根絶やしにすること。

そして、選ばれしザッハ・トルテの民族のみが愛と真実に生きるザッハ・トルテ帝国という理想郷に

生き残るのだ。


この戦いに勝つには、無論外面的な戦いも必要であるが、内面的な戦いこそが最も重要なのだ。」


「はっ。

トルテの聖典の第13巻12~15章にございますね。

自主的に、主体的に、トルテ様への絶対的忠誠心を固く守り抜くことですね。」


「そうだ。

たとえ、この世で拷問の責め苦を受けようが、たとえ死刑になろうとも、忠誠を一瞬たりとも手放せばその者は後の世で、拷問や死罪など比較にならぬ永遠の責め苦を受けるであろう。


この忠誠は百パーセント、いやに百パーセントでなければならぬ。

たとえ、99年生きて、その人生のすべてをトルテ王とその聖典を守り続けたものであったとしても、死ぬ間際のほんの一瞬でも心の中にトルテ王とその方への疑いが生じたら、行きつく先は、地面ではない。

高いところからものを落とせばそれだけ衝撃も強いように、ザッハ・トルテの近くという高さから堕ちればそこは、無限の奈落なのだ。」


「はい。

大切なことは、人間の小賢しい頭であれこれ考えたり判断せぬと言うことですね。

自分の頭で考えたり判断せず、ただザッハ・トルテに従うことが正しいことですね。

逸脱した行動はせず、トルテ法にあることを忠実に守らねばなりませんよね。」


「よくわかっているではないか。

それは、例えるなら、ミジンコがシロナガスクジラに対してあれこれと偉そうに講釈を垂れるがごとき傲慢なことなのだ。いや、それ以上なのだ。」


「・・・それにしても、なぜ、我に仕える僕たちはこうも仕事が出来んのだ!?

なぜ、侵入者を許す?

なぜ、もっと生産性が上がらぬ?


なぜ自分の頭で考えて優れたアイデアを出してこんのだ!?

なぜもっと自発的に主体的に考えて動こうとせんのだ!?


せっかく自由を与えてやっているというのに・・・。


余がここまで命がけで最前線に立って世界を救おうとしておると言うのに、なぜ余のために死んでくれる者が今まで一人もおらんのだ?


シルバーの者どもはもちろん、ゴールドの者もプラチナの者も、自分の保身ばかり考えて、金貨と家ばかりもらえたらそれでいいと思っておる。

まったく、神聖なる帝国の寄生虫め・・・!

まったく・・・なぜ、もっともっと攻めて攻めてゆかぬのだ?」


「・・・それは、最悪ですね。」


トルテ王のそうした不満--いな、「ありがたい叱咤激励の厳しいお言葉」は何時間にも及んだ。


ちなみに、八万四千の補助法典に書かれているものには、そうしたトルテ王の言行録が多くを占める。


言いたいことを言い終えて、トルテ王はふーっと一息をついた。


「この国に、旅人たちが向かっておるな。」


「はい。塔の上から確認しました。

一人の青年と、一人の少年と、二人の少女ですね。」


「奴らが何者かしっておるか?チーノ?」


チーノは手元にある紙を取りあげた。

「ほう・・・バルバ・コアの街で、我々の下部組織である石売りの仕事をやめさせた男がいたという報告があがっていますが、その特徴が彼に合致しますね・・・。

マスター・エッグタルト、それにソラ、ウミ、レイという年端も行かない少年少女たちがついてきていますね。


出身地は、それぞれメープル村、ティラミス国、そして絶海の孤島プリン島とまったくバラバラです。


あと、彼の行く先々で何か怪しげで危険な術を行って人を大勢集めているそうです。」


「ふむ・・・。

余が〈認識〉してみて分かったことがある。


人をたぶらかす力があって、ついてくる奴を騙しているということだな。

そのマスターという人間は、ありもしない現実離れした誇大妄想を言葉巧みに説き、知性のない下層民を扇動している。

そして、その力で王の位にまでのし上がろうとしておるのだろう。

何と言う傲慢な奴め。」


「なるほど。」


「奴の語ることは何か見てみたら、そう大したことではない。

ほとんど子供だましに近い。

ザッハ・トルテの〈認識〉の偉大さを太陽だとするならば、マスターとやらの〈認識〉などせいぜい足元をわずかに照らすろうそくのともしび程度だ。

少し風が吹けば消えてしまうはかないものよ。


そんな程度であるにもかかわらず、彼は偉大なる宇宙皇帝である余に嫉妬しておるのだ。

もし、国に入られておかしなことでも吹き込まれてはたまらぬ。

ここは、少し、救済処置が必要かもしれんな・・・。」







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