場所
ソラ、ウミ、レイたちはこの街をとんでもない場所だと思っていた。
たしかに、とんでもない場所には違いない。
しかし、もし誰かから奪わなければ生きのびていけない街に生まれていたら、自分たちだって「いい生き方」を放棄して「仕方がないのだ」と言い聞かせながら、甘い汁を吸い続けるか、もしくは世の中を恨み続けながら生きていくしかなかったのかもしれない。
本当はそうしたくないのに苦しみの選択をし続けて生きていかねばならないのだ。
ウミは言った。
「・・・人を裁くことはとてもたやすい。
だけど、自分のことをわずかにでも中心に据えて考えない人間がいるかな?
欲望を持たないで、人に一切迷惑を兼ねずに生きる人間はいるのかな?
人はきっと、様々なつながりや状況のなかで、悪に染まってしまったり、
逆に、マスターの周りの人たちのように、ごく自然に愛することを学ぶことだってある。
このバコアの街には多くの法律やルールが張り巡らされている。
だけど、それで人は良くなったかというとそうではない。
きっと、この街に空気のように漂いながら、人の心を支配している〈ダイモン〉が彼らを導いているのよ。
そこにいる人は誰もが知らず知らずのうちに、その〈ダイモン〉の力に従って悪に加担する。
その〈ダイモン〉はつかみどころのない何かなのだけれども・・・
けれども、たしかに力をもっていて、人を生かしたり殺したりする。」
「ウミ、ええことに気付いたな。
私がこうやって旅をしている目的の一つ。
それは、人を苦しめ支配する〈ダイモン〉の力から人を解放して自由にするためや。
人間は、出会いや縁によって変わるものや。
冬に彼切ってしまった木々もそのままやない。
春が来ればまた芽生えて花を咲かせる。
いいかい。
ものは固定した性質にずっととどまってるわけやない。
どのような人間もいつまでも成長せえへんわけやない。
ええ出会いがあれば、どうしようもなく見える人でも、正しい人間としても道をまっすぐに歩むようになるんや。
大切なことは、その出会いの場をつくること。
悪い〈ダイモン〉が活動をやめ、善い〈ダイモン〉が働くような・・・
自然とそこに居るだけで温かくなり、生き生きと自分らしさを発揮でき、互いに助け合えるようなそんな場所にこの世界がなるために。」