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風の中へ

夜が去り、朝が訪れた。


村の草原に静かに風が吹く。

小鳥たちが歌い始める。

清々しい香りが風に運ばれてくる。


ソラと、マスターは草原に立ち尽くしていた。


世界は美しかった。


ソラの心はこの美しき世界にとけこんでいき、またこの世界もソラの心にとけこんできた。



「ソラ、私についてくるか?」

「はい。」


返事は一瞬だった。


理由なんて、あえてここでは言わない。


誰だって、旅立ちたい、

その先の新しい世界を見て見たい、

そんな衝動や憧れがあるはずだ。


旅に出るということ。

それは、すべてを捨てることだった。


ソラにとって、生まれ育ってきた村、親しんだ人びと、単調な繰り返しだったが深みのある生活、

そのすべてに「またね」を言うことだった。


だけど、今やそれまでソラにとって重要そうに思われたあれやこれやのことは、この衝動の前にはその重要さの順位を譲らざるを得なかった。


その衝動は、「生命」といってもいいかもしれない。


無論、あれやこれやのことは、大切なものであることに変わりはない。

旅立つ決心をするには、いささかの心の痛み、後ろ髪惹かれるものはなかったと言えば嘘ではあるが。

だけど、後悔は一切ない。


例えるならば、それはある土地に埋蔵金が埋まっていると知った人間が、すべての財産を投げうってその土地を購入することに似ているかもしれない。




はかり知れぬ大きな力が、マスターのうちに満ちていた。

そして、その力は、ソラのすべてをそこにかけてもいいほど彼を突き動かしたのであった。


そして、ソラは一歩を踏み出した。


風の中へ。




ソラは、ワクワクしていた。

自由を感じていた。


そのモチベーションは、ゴルゴン・ゾーラを倒すことや、小さな村からの離脱という消極的なものや、使命感といったものではなく、むしろ新しい世界が自分の前に広く開かれていくのだというワクワクにあった。

それは創造的な衝動であった。

ソラの心は大空のように澄み渡っていた。



「さあ、私たちの人生にとって、生命にとって、大切な学びをこの旅の中で伝えていこう。」

マスターはそう語った。




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