行かなくちゃ
オレは今日もメイの待つ国境まで行こうかどうか迷い続けていた。
「また、この日に来る。
約束だ。」
メイとはそう言って、小指同士を結んだ。
「あなたの本当の心に照らし合わせて・・・」
シャンディの言葉が心に響く。
「わからない・・・わからない・・・。」
ダイモンのリュウがあらわれた。
「リュウ・・・。
オレは、わからない。
トルテの法に書かれていることと、シャンディの言うことと、あの若者たちの言うことと。
一体何が正しくて、何が間違っているのか。
みんな、みんな、それぞれ〈正しい〉ことばかり言うんだ。
ちょっとわからなくなってきたよ。
だけど、あの子のそばに行ってあげたい、いや、行かなくちゃ。
そう思うんだ。
この気持ちだけは、あの法にも書かれてはいない。
・・・そうだ。
たとえ・・・それが間違っていても・・・いい。
オレにとっての真実であるならば。たった一人でも、それを為さねば。
オレは行かなくちゃ。」
全速力で、小屋まで駆ける。
「メイ!メイ!」
小屋を開ける。
そこに、メイの姿はなかった。
外を見まわし叫ぶ。
「メイ!どこだ!?メイ!」
ガサッと遠くで音がする。
「メイ!そこにいたのか!?」
思わず顔がほころぶ。
!?
見慣れた顔がそこにあった。
ただし、それは、メイではなかった。
シャンディ・ガフ。
血の気が引いた。
そして、その後ろには兵士に混じって、竹馬の友ケンの姿も。
「お前、そりゃあ自業自得だろうがよ。
この前も、集まりの時、親である教官先生の悪口や陰口ばっかり言って悦に浸っていたけれど。
そりゃあ、こんないけないことを隠れてしてたら、怒るよそりゃ。」
「ケン、知らせてくれてありがとう。
私の〈認識〉で、ハルはよくこの場所にきていることは知ってたけれど。
うすうす怪しいとは思ってた。」
「あんた・・・聞いたわよ。
家のことを、青年ザッハ・トルテ愛好会の集まりで、あることないこと言いふらしたんですって?
恥をかかせやがって!
そんなに私のことが嫌いか?
お前を愛情をかけてここまで育ててきたにもかかわらず。」