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道のともしび ~こころのトゲをいやす十のメロディー~  作者: ユウさん
さいごのレッスン
225/225

エピローグ


世界を支配していたバル・バコアの国もまもなくあっけなく崩れ去り、

結局のところ、最後まで生き延び、栄えたのが、いったんは滅び去ったと思われていたものの、

大いなる〈こころ〉を大切にし、〈幸せのルール〉を浸透させた文明に他ならなかった。


水辺に植えられた木がやがて生い茂るように、〈こころ〉をたいせつにした文明は栄えた。

永遠なる〈はじめのこころ〉にしっかりと根差した〈こころ〉はたとえそれがいかに小さなものでも、見えないものでも、長い年月をかけるうちに、必ず大きな実を生み出すのである。



ゴルゴン・ゾーラは、もはやいかなる権力も力もおびき寄せる力も持つことができなくなった。


というのも、マスターは処刑場で死んだときゾーラに勝ったのだった。

完全なる敗北に見えたマスターの死は、〈たいせつ〉の勝利だった。

いかなる悪も〈たいせつ〉に打ち勝つことはできなかった。


ゾーラとその配下であるザワーク・ラウトとビーフストロ・ガノフも深く〈暗黒界〉に封じ込められた。





世界は新しくなった。


争いというものはなくなり、少なくとも、人は欲望よりも真のしあわせのみちのうちに生き、ものもこころも分かち合い、平和に創造的に暮らしているのであった。


特定の誰かだけが入れる〈よろこびの国〉は存在しなかった。

誰かにとって都合の悪い人間が堕とされるという〈暗黒界〉もなかった。


大きな〈空のこころ〉のうちで、だれしもが〈よろこびの国〉に生きていた。



誰もが、所有することなく、貪欲になることなく、

すべてのものを分け与え、そして分かち合っていた。


国同士は争い合う理由をもたなかった。

数多くある〈ムスビ〉の流派同士も、互いに認め合い、学び合い、協力のうちに〈たいせつ〉にしあっていた。



それは、〈はじめのこころ〉のうちにもともとあったもの。


しかし、それは一度失われ、けがされた。


そして、もう二度と取り戻すことのできないものだと失望されていた。


しかし、ダイモンを持つ〈新しい人〉たちが捨てなかった希望によって、それは取り戻された。


ひとつの小さな道のともしびが、世界ぜんたいを覆うようになったのだ。


失われたものが戻ってきたとき、それはより深い〈たいせつ〉によって固められたより高い次元のものとして回復されていたのだ。



ぼくたちは、〈たいせつ〉の中に生きていた。


あふれてやまない〈たいせつ〉の喜びが、ずっと続くように願っていた。

そして、その〈たいせつ〉は決して滅びることなく、終わることのないよろこびだ。



なるほど、人々には、いまだに〈トゲ〉はあったが、それはもはや「善き事」のために必要なことだった。


〈永遠の君〉は〈ともだち〉として、自由に〈こころ〉に語りかける。


皆、〈永遠の君〉をみること、交わること、一緒にいることこそを大いに喜んだ。


〈永遠の君〉は私たちの傷や哀しみのすべてを拭い去り、もう、滅びることも恐れも悲しみもなかった。


ただ、ぼくたちはぼくたちであるだけで、どこまでも〈たいせつ〉にされるのだ。

そして、ぼくたちはまた、その人がその人であるというだけで無条件にその人を〈ともだち〉として〈たいせつ〉にした。


この〈たいせつ〉の想いには限りがなく、それこそ、〈ともだち〉のために人は命を捨て、与えることすらできた。


そして、そのことによって、人は永遠に生きることができるのだ。




ぼくたちは、絶対的に肯定され、絶対的に〈たいせつ〉だった。


ぼくはそれに対して力強く「然り!」と答えた。


この返答は確かに、ぼく自身の自由から出たものだ。

だけど、そう答えてそれから「だいじょうぶ」になったわけではない。


信頼するこころすらも与えてくれたのは、〈永遠の君〉なのだ。


はじめに、絶対的で圧倒的な「だいじょうぶ」があり、その「だいじょうぶ」は僕たちに激しく呼びかけ、ぼくたちはそれに対してただ求め、叫ぶだけだった。


それはあたかも、赤ちゃんがお母さんを求めてただ泣くことに似ていたかもしれない。





レイは、アク・アッパッツァを代表する大学者として大成した。

〈ムスビ〉と〈ツカミ〉の調和をはかり、そしてそれを完成させた。

レイのおかげで、この世界の文明は何百年も一気に進んだと言われている。


レイの住んでいたプリン島とあの近くにあった島も、自ら自然と平和を取り戻した。



ソラはメープル村を拠点にしながらも、旅を続け、その出会いや冒険のことを書き留め続けていた。

世界中でマスターに触れて〈ともだち〉の輪を作った人たちのもとを回った。

ともに協力して一つの家族になるように、と。

そして、偉大なる内なる〈こころ〉の力の秘密、またそれ以上に偉大な〈たいせつ〉について伝え続け、励まし続けた。


〈永遠の君〉が必要なことは人でもものでもすべてソラに与えてくれた。




彼らは、新しいいのちとして生きているマスターと深く交わりながら生きていた。

一日一日を〈たいせつ〉によって。



ハルは、貧しい人や病気の人を助けていたが、

彼らと心を通い合わせるために、ついに、自分自身も病気になりたいと望み、そのようにまでなったという。


表面的には、最悪の不幸にしか見えなかったが、

しかしてその〈こころ〉は最大の喜びに満ち溢れていたという。


そして、ある日、ついに今にも死にそうな人のために、自分のいのちを差し出して、

ついには大きな平安のうちに死んでいったそうである。



ウミはハルの最期まで寄り添い続けた。

ウミはハルの手を握りしめ、完成された〈うた〉を何度も口ずさみ続けた。


「ハル・・・あなたは、自分のいのちを〈たいせつ〉のために使い切ったのね。

あなたは、もうこの時までも全くひとりじゃない。

あなたは、永遠の君のもとに行き、〈たいせつ〉のうちで永遠に生き続けるの。」




長い旅は終わった。


そこに、聞きなれた声が聞こえてくるのだった。


「おう。お疲れ様!

よくがんばったね。


待っとったで。

また、一緒にパーティでもしようや!


宇宙を巻き込んでな。」


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