告白
ハルがひそかに期待していたことだった。
二人の〈こころ〉の奥底では、互いに磁石のように惹かれ合いながら、薄い紙が一枚挟まっているようについに引っ付くことはなかった。
その薄い一枚を取り去るには勇気と意志が必要なのだ。
ウミがハルの目を見ながら打ち明ける。
「あのね・・・ウミは・・・ハルのことが〈たいせつ〉です。
その・・・とくべつに〈たいせつ〉なんです。
だから、ハルにはずっとウミと一緒にいて欲しいなって・・・。」
ウミの心臓の音が高鳴る。
時間というのは不思議だ。
返事を待つまでのわずかな時間がまるで、とても濃いもののように感じられる。
「今」はたしかに、リアルな「今」なのだけれども、あとほんのすこしで、「今」は過ぎ去って、
運命が決断してしまう未来のその瞬間に取って代わられてしまう・・・。
「ウミ・・・」
ハルが口を開く。
「オレで・・・いいのか。
もっと明るくて前向きで優しいやつが多くいるだろう。」
「いいえ・・・ハル・・・あなただから・・・あなたがあなたであるからどうしようもなく〈たいせつ〉があふれて仕方がないの。
あなたが死んだとき・・・ウミは哀しくて哀しくて死んでしまおうかと思った。
けれども、もう一度こうして会えるなんて・・・。
思ったの。
伝えたい想いは・・・思ったときに伝えておかないとって。
そうじゃないと、必ず後悔するから。」
「ウミ・・・ウミ・・・ウミ・・・
ありがとう!
オレもウミのことが〈たいせつ〉だ!
君を守りたい。
ずっと一緒に居てくれ!」
そう言って、ハルはウミを抱きしめた。
「しかし・・・ウミ・・・この〈たいせつ〉は、より大いなる〈たいせつ〉への入り口だ。
オレは、よろこんで自らの重荷や運命を担って〈たいせつ〉のうちに生き、死んでいきたい。
ああ!〈永遠の君〉よ・・・
あなたの水のような、火のような〈たいせつ〉の力が、
オレをこの世界のあらゆるとらわれから解き放ち自由にしてくれますように!
そして、あなたがオレへの〈たいせつ〉のために死んでくださったように・・・
オレもあなたへの〈たいせつ〉のために死ぬことができることをこころの底から願います!」
「ええ。もちろん分かっています。
ウミもそう願います!
この〈たいせつ〉がより大きな〈たいせつ〉をあらわすように、あなたについていきたいのです。」
こうして、ハルとウミの二人は新しい旅に出た。
ソラとレイは、ずっとずっと見えなくなるまで手を振っていた。
「さてと・・・
僕たちも行くかな。」
「ええ。」
それぞれは、それぞれの道を歩み始めた。
完成した〈うた〉が彼らの歩みを祝福していた。




