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道のともしび ~こころのトゲをいやす十のメロディー~  作者: ユウさん
さいごのレッスン
217/225

ハルの死


「なぜ、なぜ、このオレがそのような運命を担わなければならなかったのか。」


ハルは、一人自分だけが切り離され、見捨てられ、忘れ去られたように感じた。

世界からも、仲間からも、そして〈永遠の君〉からも。


いや、たとえ、彼らがいかに自分を〈たいせつ〉にしてくれようとも、

自分の中にある〈トゲ〉がそれを拒絶し、傷つけて、踏みつけてしまわざるを得ないのだ。


自分の〈トゲ〉は自分を抱きしめようとするものを傷つける。


それは、別に今初めて感じたものではなかった。

物心ついた時からずっとずっと感じ当たり前になっていたこと。


あれは夢だった。幻だったのだ。

幸せな幻想だった。

マスターや仲間たちと出会い、笑愛、向かい入れられ、心が少しばかり通じたような気がしたあの日々は。


こんなことになるくらいだったら、出会っていなければ。

あのままトルテ国に洗脳されたまま一生を終えていれば、幾分かはマシだったかもしれなかった。


ソラは逃げた。

レイも逃げた。

ウミも泣くだけで何もできない。


そしてオレ自身も。


「ゾーラ、お前の勝ちだ。


ともしびは消え去ったよ。

そして、オレたちが歩むべき道も、法も、正義も、完全に敗北した。


無力だった。

完全に無力だったよ、〈永遠の君〉は。


俺の人生は、ただ、不幸のうちに生まれ、チラリと希望を見せられたが、裏切られ、裏切り、また絶望に戻るだけだったのだ。


ハルは、もう誰にも届くことのない国に向かって、自分自身を告白し、そして何の応答もないことを確かめた。

そしてある覚悟を決めた。


その覚悟を決めた時、ハルははっきりと悟った。

空はどこまでもクリアーで、世界という世界がボロボロと剥がれ落ちていった。


「生きる価値は、ない。

そう。

幸せや喜びや意味を求めようとするから、人はますます苦しみにはまっていくのだ。

人生とは、何の意味もない苦しみだけなのだ。

そしてその全てが消えるだけ。そんなごくごく単純なことなのだ。


オレたちはみんな塵から出て塵に帰るだけ。

さぁ、オレも帰ろう。塵に。」


ハルは、手元にある槍を見た。

マスターの血がまだ赤黒くこびりついている。


「ごめん。

ごめん。

マスター。


ごめんなさい。ごめんなさい。


オレはもうこれ以上生きて行けそうにないです。

ありとあらゆることをやろうとしたのですが、運命がそれを許してくれないようです。


あなたのところに、なんか行けはしない、ですよね。

でも、もうダメなんです。

オレは生まれてくるべきではなかったんです。」


ハルは力を込めて槍を握り、目を見開いて、自分に突き刺した。


血が噴き出し、ハルはその場に倒れ込み息絶えた。


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