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道のともしび ~こころのトゲをいやす十のメロディー~  作者: ユウさん
さいごのレッスン
203/225

「バル・バコアの兵士だ。


お尋ねものをさがしているのだが・・・。

マスターという者・・・マスター・エッグタルトはいるか?」


兵士たちは、マスターを捜索していた。

彼らはマスターの顔を知らなかった。


「マスターが一体何をしたの?」

ウミが訊いた。


「ああ。

どこからともなく出没して、世界の秩序を乱して回る犯罪者だ。」


「犯罪者・・・!?

まさか・・・マスターが。」


「ああ・・・。

それこそ無数の罪があるよ。


法律で禁止されていることを平気でやりよる。

まず、服装が勝手すぎる。

医者でもないのに、病気を治したり、

奴隷に自由に生きるように誘惑をかけたり、

日陰者たちを結託させて結社をつくったり、

許可もとらず勝手に誰彼ともなく自分のものを贈与したり。

話している内容も実に危険だ。」


「・・・それのどこがいけないんですか?」


「どこがいけないって・・・

駄目なものは駄目だ。

だてに決まりがあるわけじゃない。」


「だから・・・何がいけないんですか?」


「いけないものはいけないんだ。

みんなそれを護ってるんだから。」


「マスターは、人間を本当に大切にしているんです。

どんな儀式やどんな決まりよりも人間が一番大切なんです。


人が決まりのためにあるんじゃないでしょう?

決まりは、人を守るために・・・〈たいせつ〉にするためにあるんでしょう!?」


「たしかに・・・君の言うことはもっともだが・・・

これは、秩序に関わることだ。


・・・マスターを擁護するということは・・・

お前は、まさか・・・マスターの一味か?

もし彼に与することがあるなら・・・身分も命も奪われるぞ。」


「そ・・・そういうわけじゃ・・・」


ウミの中からはそういうセリフがつい意図せず出てきた。


「お前らもまさかマスターの一味じゃないだろうな。」


一同は凍りついて、何も話せなかった。

どれだけこころが一時的に燃えていたとしても、いざとなると臆病になる。



「マスターがいたら知らせてくれ。


もし情報をくれて捉えることができたなら報酬として、金貨を三枚やろう。


ちなみに・・・お前たちは知ってるかどうか知らんが、

この村だけでなく、ザッハ・トルテの国もティラミス国もわがバル・バコアの支配下となった。


ザッハ・トルテ王とその一味は処刑に処される予定だ。

マスター一味とやらもザッハ・トルテ一味と同罪だ。」



「ザッハ・トルテが・・・。」


ハルは何か思うところがあるようだった。


メイは言った。

「もう・・・どうでもいいよ。あんな国。」



「さて・・・食事の時間だ。」


兵士はそう言うと、そとに出ていき、村で飼っている羊を食べたいと言うことを要求した。


「ピイちゃん!」


ソラが大切に育ててきた羊だった。



羊のピイちゃんは怯えていた。


檻が開くも、兵士の目を優しく見つめ、震えながらその先に向かってゆく。


頭に一撃を食らうとその場で倒れこんだ。


そして、気を失っているうちに、一気に首を切られてしまった。


兵士の作業はすべて事務的、機械的だった。


「そうだ・・・羊の血や肉は病気を治したり、健康にいいというからな・・・。

必要な奴に売り飛ばそうか。」



ソラはその場に膝を崩し泣き崩れた。


マスターはその様子をじっと見つめながら、何かを覚悟した様子だった。



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