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暗黒

そして、その裂け目から〈暗黒〉が流れ出してきた。


ソラはその〈暗黒〉を知っていた。


―――そう。

旅のはじめに村を襲ったあの暗黒・・・


「ゴルゴン・ゾーラ!」

ソラが叫ぶ。


人々は血管のように脈打って荒れ狂う暗黒を見て、怯えて叫んだ。

「なんだ・・・これは・・・なんなんだこれは。」


「やはり・・・ザッハ・トルテの語っていたことは、嘘などではなかったのか?」

トルテを捨てた人びともそれを見て恐れおののいた。


バコアの兵士たちもそれ見て、なすすべもなく逃げ惑うばかりだった。


「宇宙皇帝様!宇宙皇帝様!

これが、かねてよりあなたがおっしゃられていた暗黒のゾーラなのですか!?」

ケンが訊く。


どうも、薬の幻覚とは違う。


ザッハ・トルテはザワーク・ラウトの裏切りに加え、〈暗黒〉を見て気が狂わんばかりになっていた。

その〈暗黒〉は、自分が思い描き語ってきたどの〈暗黒〉とも違うものだったからだ。


トルテ国の黒い塔の上にある空間が開かれ、そこからも暗黒と共に、様々な魑魅魍魎が降って湧いてきた。


〈暗黒〉であるゴルゴン・ゾーラの両脇には、ザワーク・ラウトとビーフストロ・ガノフが現れた。


そして、その大きさは天を包み込むほどであった。


ブラック・サンダーが塔の周りで三体のエネルギーと呼応するように脈打っている。


その〈触手〉の先には〈トゲ〉が生えており、トルテやバコアの人びとのこころにつながっているのであった。


いや、それだけでない。

その触手は、ソラにもハルにもウミにもレイにも突き刺さっていた・・・!!


その触手はすでに誰しものうちでとぐろを巻き、〈存在〉に根付いていた。


清らかに安らかに生まれてくるすべての者はその触手に生まれながらにして汚染よごされることをまぬかれ得なかった。


「みんな・・・ダメだ、希望を捨てちゃいけない!

愛を、愛を信じよう!」

ソラがみんなに呼びかける。


ソラがそう言って飛びあがっても、ソラの胸に刺さったトゲに触手は引っ掛かり、すぐさまソラの全身をがんじがらめにしてしまった。


「落ち着け。

触手の正体を見極めろ。

人は知恵の光によって、それを抜き取ることができるはずだ。」


たしかに、触手はレイの智恵の光によって退歩した。

しかし、すでに触手はレイの背中、そして胸の中にまで入り込んでおりそのまま彼女を打ち倒してしまったのである。


ウミはその場で何もできずへたり込む以外になかった。

「〈永遠の君〉・・・あーちゃん・・・!」


生きとし生けるものは、生きている限り、絶対的な否定、永遠の否定のうちに責めを負っている。


彼らの上にはありとあらゆる苦難、絶望が次々と寄ってたかって覆いかぶさってきた。

光は見えない。

いや、ちらりと見える光も、すぐに覆い隠されてしまい、手が届かない。

取り去られてしまう。

それゆえに、その絶望はさらに深く暗いものとなった。



暗黒は、ザッハ・トルテもバル・バコアも包み込んだ。

何人もの人々が、暗黒の中でおぼれたり、それに押しつぶされている。



「逃げよう!」


「どこへ?」


「ぼくの村へ!メープルへ!」


ソラ、ウミ、レイ、ハル・・・そして、妹のメイは五人で触手から逃れるように、走り続けた。



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