ビーフストロ・ガノフ
ザッハ・トルテ王は、高い次元で起きていることを〈認識〉し、国が〈闇の軍団〉の総攻撃を受けていることを「見抜いた」。
この世界を裏で支配している闇の結社が、ザッハ・トルテをつぶそうとして圧力をかけてきている・・・。
そうすれば、ザッハ・トルテ国からなぜか離反者が出るのも、
闇の波動から護るために、目を隠したにも関わらず、つまづいて転ぶことが多いのも、すべてがつじつまがあった。
トルテ王は、〈ビーフストロ・ガノフ〉の配下にあるバル・バコアの街にその結社があると透視。
たしかに、バル・バコアの街の中心には、天を衝くほどの巨大な塔があり、それは〈ビーフストロ・ガノフ〉とつながり、時折〈ブラック・サンダー〉を発していた。
しかし、残念ながら結社らしきものは客観的に確認されていない。
誰か一人か少数の権力者がそこを牛耳っていたわけではなかった。
誰にもコントロールしきれないような巨大な「流れ」が、塔を形成し、ガノフとつながっていた。
その街にいる一人一人が多かれ少なかれガノフとつながりを保つことによってその流れ自体が形成されていたのだ。
人々は、だれでも自由にガノフにアクセスできた。
その象徴が、ブラック・サンダーを発する塔であった。
ガノフの指示に従う人は、それによって富を得ることができたし、また地位も得ることができた。
彼らは、ガノフに対して、時間と〈自分らしさ〉と〈自由〉を対価として捧げた。
そうして、いつの間にか、〈自由〉だった人々は、自らの〈主人〉となることをやめ、ガノフの提供する様々な〈主人〉に自分の在り方を決定してもらうようになったのである。
その代表的なものがを挙げてみよう。
組織
お金
仕事
占い
情報
医者・薬
権威・地位
などである。
青年ザッハ・トルテは、それらのすべてに恵まれなかった。
裏切られ続けてきた。
手に入らなかった。
彼はずっと思っていた。
「ガノフこそ、この世界における諸悪の根源である」
と。
そして最終戦争の勃発したこのたびは、「秘密兵器」を抱えた兵士たちを
ガノフの塔に送り込んで、兵士の命もろとも塔を破壊することに成功したのであった。
トルテ国では国を挙げて万歳三唱が行われた。
そして、それを機に宣戦を布告し、次々とトルテの軍隊は世界中に侵略を開始したのであった。
一方、塔を破壊されたバコアでは、一時は蟻の子を散らしたような混乱状態があったものの、
押さえつけられていた欲望が爆発し世界中に自らの欲望を広げる試みが始まっていった。
ガノフは、まるで雨雲のようにバコアの街を超えて広がっていく。
「ハハハ!
残念!
逆効果であったな。
あの塔は、我とつながる場所であると同時に、
我の暴走を押さえつけるコントロールシステムとしても機能していたというのに、
それをわざわざ破壊してしまうなんて馬鹿な奴め!」
バコアは、すぐさま報復措置として、トルテ国に攻め入ろうとした。