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認識

オレだけが、「みんなが見えているもの」が見えていないようだ。


ありとあらゆる「英才教育」、そして血の滲む努力をしてきたにもかかわらずだ。


とりわけ、ブロンズやシルバー以上になるためには、「肉眼で捉えることのできない世界の存在」を知覚できなければいけない。

そしてそのことは、しいては、「選ばれた者」であることの証明でもあった。


その能力のことを〈認識〉と呼ぶ。

〈認識〉を持たないものは、光沢のブレスレットをつけた上級国民の身分からは門前払いされる。


いわば、もし街でブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、もしくはそれ以上のブレスレットをつけている者を見たら、それは〈認識〉がある選ばし者であるというわけだ。


もちろん、階級が上がれば上がるほどその能力は高いものとなる。


はじめは、その人間をまとっているオーラや、その人を支配している「見えない世界の存在」を見抜くことから。

次第に、その人の前の人生が、百年、千年、万年前と見えるようになってくる。

また、宇宙が、何層ものヒエラルキー構造になっていることを〈認識〉し、その世界に自由自在にアクセスすることもできるようになる。

そして究極のイデアとも呼ばれる、「ザッハ・トルテ宇宙」に向けて永遠の進化の旅が続くのである。


また、〈認識〉の次元が高まってくると、時間的には遥かなる過去から永遠の未来までを見通すこともできるようになる。

人類は、30億年前から存在し、人類の祖先は太陽に住んでいたことなどもわかってくる。

文明を発達させすぎた太陽の人類は、強力な爆弾によって太陽を今のような燃え盛る星にしてしまった。

脱出した人類は、宇宙に散らばる星々に移住し、文明を築きあげていった。


これは、複数のザッハ・トルテ国の科学者たちによっても確認されている事実である。


トルテ宇宙皇帝陛下はこのことをはじめに発見した偉大な科学者でもあった。


宇宙最高レベルの次元に君臨し、とりわけこの世界の全てを統治してきた偉大なる存在がザッハ・トルテであるというわけである。

全人類はこの全ての存在の親の親とも言えるべきザッハ・トルテ宇宙皇帝陛下の教えに完全に従うことで、宇宙の完成に寄与するのである。


たしかにこれらのことは、肉眼や実験、観察によってはうかがい知ることはできないが、それはあくまでも〈認識〉に目覚めていない低次元の人間にとっての話だ。


しかし、もし〈認識〉に目覚めた人間の目から見れば、そうした肉眼で見える世界しか信じない人間などは、知能を持たず言葉も解しない猿と同じようなものなのだ。



オレはひょっとしたら低次元の人間、すなわち禽獣と同じなのだろうか。


もし、オレが何も〈認識〉などできていないことがバレたら・・・。


「狂人」として処分されてしまう。


オレは、自分が実は何一つとして真理を〈認識〉できていないことがバレはしないか怯えていた。

必死にザッハ・トルテ理論を読み込み、〈認識〉を持っている人間の行動や物事の捉え方のパターンを予想するようになった。




ザッハ・トルテ王は広場で「馬」を見せた。

王の服装は、虹の色をしたスーツだといい、相変わらず国民は熱狂する。


その「馬」は、角の生えた目のつぶらで背中にまだらのある四本足の動物だった。


オレは、それは「鹿」だと思ったが、真理を〈認識〉している人間からしたら「馬」なのだろう。


そして、この馬という生物の正体は、何百億光年離れた星からやってきたエイリアンであるという。

ザッハ・トルテ宇宙皇帝陛下に仕えるためにわざわざやってきたのだそうだ。


これも、多くの科学者が口を揃えて首肯する歴史的事実なのである。


これを認められない人間は、やはり「唯物論者」「テロリスト」「狂人」のレッテルを貼られ、白い目でみられることとなった。



そんなオレも、いよいよ「素直」になれる時がやってきた。


すなわち、ザッハ・トルテの〈認識〉が本物だと気がつくようになってきたのだった

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