拒絶
「ごめん・・・みんな・・・ごめん。」
ハルは謝らずにはいられなかった。
三人は、返す言葉なく無言でうつむくしかなかった。
別に、ハルが悪いわけじゃない。
全然悪くない。
むしろ、被害者はハルの方だ。
ハル自身、このことを思い出して、押しつぶされそうだった。
一時期はザッハ・トルテ国の上級臣民として、喜んで彼らに加担していた過去がある・・・。
「・・・なぜ・・・なぜこんなことが・・・。」
「今までの旅には何の意味があったんだろう・・・。」
あの素晴らしい暖かく、喜びに満ちた体験のすべてが、一瞬で汚され崩れ去ったようだった。
「マスター!マスター!
〈はじめのこころ〉よ!
〈永遠の君〉よ!
そこにいるんですか?
それともいないんですか?
なぜこんな時に限って、姿を隠されるのですか?
・・・あなたは何でもできるのではないですか?
あなたは何でもご存知ではないですか?
それだったら、なぜこんなことをお許しになるのですか?
なぜ、あなたがいらっしゃるのだったら、なぜ・・・
・・・なぜ、そもそもこのような人間というものが生まれてきたのですか?
答えて・・・答えてください。」
誰ともなく、心の中からそんな呻きが沸き上がった。
いや、ウミに至ってはこころを上げることすらできず言葉一つ発することができなかった。
レイが呻く。
「〈永遠の君〉は居られる。
たしかに、居られる。
・・・それは、この世界があるということは・・・
この素晴らしい宇宙が存在すると言うことは、そういうことだ・・・。
そして、私たちにいつも語りかけて支えようとしているのかもしれない。
そして、私たちをいつも〈たいせつ〉にしておられるのかもしれない。
だけど・・・だけど、
だから何なんだ。
だから、何だというのだ!?
仮にそのことが本当だとしても、
いや、本当だとすると、
私は、耐えられない!
私たちの〈こころ〉のなかには、〈永遠の君〉が入り込む空間などわずかにも残されていないのだ!
ああ、私の〈こころ〉の中にあるものは、
人を裁く冷たい知性と不信と恐れ。
無力・・・知性の無力!
どれだけ、無限の〈たいせつ〉が太陽の光線の如くに私の〈こころ〉に差し込もうとしても、
私はそれを拒絶すること以外できないのだ。
呼びかけても、呼びかけても、
それは私の〈こころ〉の中で脆く崩れ去って、虚空に消えてゆくのだ。
もはや、私は天を見上げることができない・・・。
私の中にいかなる〈たいせつ〉もないのだ。」