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宇宙最終戦争

トルテ王はかねてより、次元が上昇し、〈世界の終わり〉が来るということを予言していた。


肉体とは幻想であり、〈こころ〉の乗り船にしかすぎず、この物質世界は暗黒の勢力がつくりだしたまやかしの牢獄である。

したがって、いずれ肉体も不要なものとして〈断捨離〉されることがベストの選択なのである。


最後の審判においては、光の身体を纏いしトルテの選ばれし臣民だけが次元の上昇の際に最終的に生き残り、天空のザッハ・トルテ宇宙において生き永らえるのだと信じていた。


トルテ王は自分が、外部から闇の波動で攻撃され、内部にも裏切り者が出て、国が崩壊し、次元上昇の計画が失敗し、しまいには自分は殺されるのではないかという被害妄想を絶えず抱き続けて怯えていた。


臣民全員に崇められても、

白亜の宮殿に住もうとも、

何人もの美女を侍らせても、

何ものかによる「闇の波動」の攻撃からをひしひしと感じていた。


それは、今までに〈救済〉した数知れない人びとの憎しみや恨みの念かもしれない。


と同時に、それは宇宙皇帝たる自らが持つ特別な能力であることの証左であるとも感じていた。


トルテ王は、毎晩毎晩現れてくる〈救済〉したはずの無数の存在に慈しみを以て諭す。


「貴様らには・・・感謝の念はないのか?

私にそこまでしてもらって、本当は感謝こそすれ、恨みをもって出てくるのは筋違いのものではないか?

〈救済〉を望む民ははず多くいるというのに、汝らは特別に直々に尊い宇宙皇帝の名のもとにその助けを借りて〈救済〉されたのだ。

それは、勲章に等しいものなのだぞ。


貴様らが、今でもそんな苦しみの世界にいるのは、自業自得ではないか?

自分で自分をそのような牢獄の中に閉じ込めているのだ。


早く、私に感謝し、光あふれる幸福の世界に還らないか。


ええい、去れ!

暗黒の勢力どもよ!去れ!」


トルテ王は、闇の波動から自らを守るために、全身に透明なラップを巻き付けて銀色のドラム缶に入り込むようになった。

目には、パンダの仮面を被り、

口には、猿のマスクをつけ、ありとあらゆる闇の波動から守られることができるとした。

そして、それを、「闇の波動から身を護る最強の防具」ということで、臣民たちにも売りつけ・・・いや、奉納という修行の機会を与えたうえ、無償で配布しさらに多額の富を蓄えるようになった。


そのような姿で、生活をしているとたびたび、階段で転がり落ちてしまうこともあった。


そのたびにザッハ・トルテは確信した。

「誰かがこの私を躓かせた・・・。

・・・なぜだ・・・なぜ・・・ここまで厳重な警戒をしているのに・・・。


そうか・・・そうだな。

獅子身中の虫ありとはこのことか。

誰かが、この国に忍び込み、この私の命を狙っている・・・!」



トルテ王は、日々神殿でかしずいて祈った。

「わが僕、ザワーク・ラウトよ、私は闇の存在にいつも狙われているのだ。

どうか、愛するわがこの王国の民を護ってほしい。」


「・・・」


「そうか。

いよいよ・・・いよいよか。

宇宙最終決戦の火ぶたが切って落とされるのは・・・。


ペペロン・チーノよ。」


「はっ。

偉大なるザッハ・トルテ宇宙皇帝陛下様、いかがされましたか。」


「いよいよだ・・・いよいよ、最終決戦がはじまりそうなのだ。

闇がついに、神聖なこの王宮にまで入りこんできたようだ。

お前は気が付かないか?」


「ええ・・・うすうすとはですが。」


「うすうすと、だと?

この私ははっきりとありありと感じ取っているというのに、わが腹心のお前がそのようなことでどうする!?」


「申し訳ございません・・・。」


もし、ここで「ええ、はっきりと感じます」と言おうものなら、「ではなぜそこまで分かっていながら私に進言しなかったのだ。」と責められそうであったので、チーノはあえてああ答えたのであった。


「世界の終わりには、人類は選ばれし者とそれ以外の獣に分けられる。その中間はあり得ない。

今、最後の審判の時が来たようだ。


なぜそれが分かるか。

というのも、その時には闇どもが光に一斉に攻撃をかけてくるからだ。


奴らも滅ぼされまいとして必死なのだ。


わが声を聴いても、聞かぬふりをしたり、従わず反発したり、迫害を続けた者共は永遠の滅びに入り、

しっかりと最後まで忍耐強く私につかまってきたものは・・・

いよいよ悲しみも憂いもないトルテ宇宙へと向かうであろう。」




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