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〈たいせつ〉のこころ

その時、マスター・エッグタルトが四人の前に現れた。


「マスター!」


四人は、マスターの姿を見て安心した。


「ソラ、ウミ、レイ、ハル・・・ようがんばったな。

みんなのことは、ずっと分かってたで。

今までの話も、しっかり聞いとったよ。」


ソラは言った。

「マスターは・・・すぐに明確な答えを与える前に、ぼくたちを自由にさせる。

そして、心の赴くままに、望むままに、やらせてみる。

だけど、いつも見守ってくれていて、そして、必要な時には必要な助けを与えてくれましたね。


そのことが、ぼくたちを大きな冒険に駆り出すことを可能にし、そして、支えになってくれたのです。」


ウミがメロディーを差し出して、言う。

「マスター、これが、宇宙に散らばった九つのメロディーです。

みんなで集めて、揃えたんです。」


マスターは、ウミの頭をなでて言った。

「本当に良くやったなあ。素晴らしい!

では、みんな、この〈うた〉を歌ってみてくれ。

こころを空にどこまでもどこまでも高く開いて・・・。」


マスターは、あの時のように四人にろうそくを持たせて、一本一本祈りを込めて火を配っていった。


自然に、〈こころ〉の泉から〈うた〉が湧き出してゆく。

それぞれがそれぞれの〈うた〉を自由に奏でながら、すべての〈うた〉は交じり合い、調和して一つになってゆく。



それは、〈永遠の君〉がいつも虚空いっぱいに鳴り響かせている〈うた〉のメロディーと響き合った。


「ああ・・・これが、これが、完成された〈うた〉なのね。」


歌声は、〈こころ〉と共に、天上に高く高くのぼっていく。

それは、空と海と大地とすべてを包み込んでどこまでもどこまでも広く広く、無限に至るまで響いていく。


すべては、たった一つの〈ことば〉から成り立っていた。


そして、その〈ことば〉が、〈はじめのこころ〉であり、その〈ことば〉はいつも〈はじめのこころ〉と共にあった。



四人は、どんな想像もつかないほどの無限の大きさと無限の小ささと無限の多様性にみちた宇宙が、

どんな想像もつかないほどごくごくシンプルなたったひとつの〈ことば〉で成り立っているという秘密をちらりと垣間見た。


そのシンプルさは、いかなる言葉をもってしても言い表せないほどのものであり、

いかなる沈黙をもってしてもまだまだ沈黙が足りないほどだった。


その沈黙ほど雄弁なものはなかった。


四人は、〈こころ〉の沈黙の深みに潜っていこうとしたが、浮き輪をつけたまま海底に潜るほど難しいものだった。


なぜなら、彼らの〈こころ〉は、あまりにも複雑極まりないものだったからだ。




沈黙の〈うた〉は果てしない虚空を震わせ続けた。



しかし、それでもまだ完成はしていなかった。


〈うた〉はまだ・・・まだ完成していなかった。



「そ・・・そんな。


これ以上に一体何があるというの?


まだ、何か欠けている決定的なものがあるの?


すべてを完成させる楽章がまだあるというの?」



マスターが口を開いた。


「すべてがそこからはじまり、すべてを完成させるもの・・・

それは〈たいせつ〉ということや。」


「〈たいせつ〉・・・?」


「ああ・・・これが、私との旅での最後のレッスンや。

この〈たいせつ〉という楽章を君たちが〈こころ〉に刻み込んだら、宇宙はやすらぎを取り戻し、真の完成に向かう。」


「そうか・・・あとひとつで、終わっちゃうんだね。

これで、最後なんだね。

この大切な・・・家族のような仲間との旅とも。」


「でも、旅を完成させるには、オレたちは行かねばならないよね・・。」


マスターは言った。


「君たちの〈こころ〉には、それぞれ学ぶべき課題、乗り越えるべき問題がある。

私たちは、〈体験〉をするために、世界に繰り出していくんや。」


「体験・・・」


「なんで、わざわざ辛い思いをしにお金払って体を動かしに行くやつがおんねん?

それは、体を鍛えるためやろがい。」


四人は笑った。


「私たちは皆、世界に生まれてくるにあたって、それぞれ固有の役割や約束というものを与えられて生きとんねん。


なぜかわからへんけど、そのことを考えるだけで心がときめいて仕方がなくなるもの、自然とそのことが楽しくて、ひたすらやってまうっていうことはそれを見つける大きなヒントやで。


他の人があまりでけへんけれど、自分だけやってみたら、苦なくできるっつーことも、天からの〈ギフト〉や。大切に使いなはれ。」


ソラは、いくつも思い当たる節があって、うれしくなってきた。

ハルは自分に何もないことを知って、愕然として、落ち込んだ。


「ハル、自分がコンプレックスに感じとること、しんどかったこと、誰にもわかってもらえへんことのなかにこそ、あんたの強みがあんねんで。」

うつむいているハルの姿を見て、マスターが声をかけた。


「えっ・・・そうなんですか?」

ハルははっとして顔をあげた。



「乗り越え方や解決方法はいくつもある。

やけど、何にせよ、大切なのは、そこに〈たいせつ〉の思いがあるかってことや。

そして、そこに〈明るさ〉やこころが軽くなることがあるかどうかってことやな。


それが出来たら合格。

そのこころに、じっくりじっくり自分を合わせていくんやで。


それが出来たら、何か身の回りに幸せな変化が起こってくるはずやからな。

物事はすごくシンプルにできとる。」



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