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成功

一同は、ソラの物語に聞き入った。


「何度も、こころの法則というものを疑った。

こころが万能の力であれば、なぜこんな思いもよらない事件が起こるのだろうとも、ね。

あるいは、自分に悪いところがあったのかもしれないとも思って、自分を責めてみた。

しかし、自分を責めてはいけないと思うと、周りがすべて悪いと思うようにもなった。


・・・だけど、自分も相手も裁かずに・・・このことを善い方向に変えていくにはどうしたらいいかと問いかけたんだ。


悔しがったり、相手や自分を責める時間は無駄だ、と。

出来事は出来事だ。

それに反応する自分のこころがあるだけだと割り切って、とにかく目の前の仕事をやることにベストを尽くしたよ。」


「今度こそは、成功したでしょう?」


「いや、一度信用を失った少年のところでものを買う人間はなかなか多くは現れなかったよ・・・。


バーのもとお客さんも、仲の良くなった人たちも、ぼくに会いに来てくれると思ったんだけれども・・・それっきりさ。

道でであっても、すっかり忘れて、赤の他人さ。」


「一度お世話になった人を捨てるなんて・・・なんて薄情な人たちなんだ!?」


「ああ・・・ぼくでもさすがに人間を信じられなくなりそうだったよ。

もう、あのあたたかいメープル村に戻りたい・・・。

冒険はおしまいにしたい。

何度もそう思った。


だけどね・・・

ウミ、レイ、ハル、そしてマスターの顔が思い浮かんだんだ。」


いつも能天気で無邪気な笑顔しか見せなかったソラが涙を流すのを見たのは初めてかもしれない・・・。


「ソラ・・・。」


「こんなところで、あきらめられるか・・・。

ぼくを信じて旅を続けている仲間がいる・・・。

みんなみんな、それぞれ大変なところを通ってきたんだ。


特に、ハルなんか、ぼくとは比べ物にならないくらい大変な思いをしてきたのに、ぼくよりもずっとずっと精いっぱい前に進もうとしている。」


「ソラ・・・オレは、君が言うほどじゃないよ!」


「オレはみんないるところまで進むぞ。

今は闇かもしれないけれども、光あふれる世界に出たとき・・・大成功を収めた時、

あんなこともあったなあ、こんなこともあったなあとネタにしてやるんだって思って、笑っていたよ。


だから、弱音なんかはくものか。

泣き言なんか言うものか。

不幸なんてねじ伏せてやれ!

そういう強い意志を持ってやってきたんだ。」


「ソラ・・・やっぱり、君はすごい。本当に、すごいよ。」


「ふふ、ハル。

だろう。ぼくはすごいんだ!

いや、すごいんじゃない。とってもすごいんだ。

めちゃくちゃすごいんだ!」


ソラもハルも笑った。


「そんな感じで、長い間トンネルを笑顔とプラスの考え方でやっているうちに、やっと光が見えてきたんだ。


これも、本当に運が良かったとしか言いようがないんだけれども・・・

まあ、そもそも、メープル村でマスターに出逢っていきなり旅に出ることが出来た自体が、おそろしく運のいいことだけれども・・・とにかく僕は運がいいんだ。

笑えるほど運がいいんだ。


ぼくのように運のいい人間は、どこまで行っても運がいいんだ。

たとえ、逆境や困難が起こってきたとしても、それがみんな全部いいことに変わってしまうほど運がいいんだ。


自分は運がいいのかって、何回言うのかって?

何回でも言うよ。

本当にそうとしか思えないもの。」


「ソラ、君のそうした自分を信じられる態度が、道を開いてきたんだろうね。」


「新しく始めた商売があと一歩でつぶれるというところになった。


せっかくだから、同じ潰れるのでも、自分のやりたいことを精いっぱいやりまくろうという感じになってきて、とにかく、楽しみまくった。


ふと足を止めたお客が、ぼくの仕事の手つきを見て、感動しているのだ。

そして、そのままいろいろと話し込んでしまっているうちに、ぼくはマスターから聞いた話をいろいろ伝えたんだ。


そうしたら、ぼくの話をまとめて、多くの人に伝えたいというのだ。


その方の紹介のおかげで、ぼくのところにこれまでにないほど多くのお客さんがやってきてくれた。


それともう一つ。

ぼくは、自分の商品を家に居ながらにして、何百万人の人のもとに届けることに成功したんだ。

レイからもらった、〈窓〉を使えば、そんなことが可能になる。

そのことが、ぼくの奉仕を必要としている多くの人々のところに届く。

そして、数えきれない人を支え、幸せにすることが出来ているんだ。


ぼくはそのシステムの管理をするだけで、わずかな時間で、汗水たらして一日中働くよりもはるかに多くの富の流れを生み出すことに成功したのだ。


お金の流れている川から、バケツで水を汲みに行っていたものが、直接水を引くことが出来る水路を作り出すことに成功したんだ。


働く時間も一日数時間程度のもので、あとは、一日中遊んでいても何をしていてもいいのだけれども・・・ぼくはやはり仕事をすることが好きだから、それに時間を費やすのだけれども。」


「ふうん。賢いことを考えつくものね。」

レイは興味深そうにあいづちを打つ。


「だけど、その力を自分の願望のためだけに使っていても、どこか虚しいものだと感じた。

どうせなら、みんなを笑顔にして幸せにすることのために使いたいと思ったんだ。


ぼくは、誰の笑顔が見たいか・・・

誰の幸せのために生きるのか・・・

っていうことをずっと考えていた。


そうしたら、今まで以上に、富というものを有用に使って行かなければとおもったんだ。


また、自分は多くの人に生かされてここまでやってきた。

こころから感謝が沸き上がってきて、

これからの人生は、ただひたすらお返しをしていきたいと思うようになったんだ。


ぼくは、この世界の後に続く人のために、お金と事業を残したいと思うんだ。」


ソラが語り終えると、一同は単なる自慢話ではない話に感動を覚えた。



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