個性を通して
「明らかでないものは、明らかになっているものよりもはるかに深く広大なのね・・・。
その広大なものよりも広大なものがわたしの〈こころ〉。
わたしより、近い処にあってそれでも分かることのない遥かなるわたしの〈こころ〉・・・。
私たちは、この摩訶不思議な世界のいろいろな要素を理解できる範囲の物差しで切り取って、世界を作っているのね・・・。
感覚や、経験、また空間や時間や、これがあってこれが起こるという物事のルール・・・。
そういった決まった形式のなかでしか、世界を分かることはできない。
だけど、そのこの〈こころ〉の形式すらもどんどん進化を続けていくことが出来る・・・。
でも、知らないことも知らない世界のほうがはるかに大きくて・・・
今、ウミはこの知らないことも知らない世界を生きている・・・生かされている。」
〈星の海〉全体が、九つ目のメロディーを奏でた。
それは「無限なるこころ」であった。
「本当のことは・・・」
マスターは語った。
「もちろん、いまあなたがいる世界もそう。
だけど、こんな壮大無限な世界のうちにだけあるということやない。
〈本当のこと〉は、いつも、人と人の間に育てられていくもの・・・育んでいくべきものやで。」
「はい。マスター。」
「すべてを覆う同じ一つの〈ことば〉は、それぞれ〈珠〉を形作り、互いに関係し、関係の中で存在と時間と法則とを生み出す。
しかし、それらはただ考えられた抽象的で、力を持たない理屈などではないねん。
〈こころ〉が活動する上で、その根っこにある本当のすべてを覆う〈ことば〉というもんは、
あなたたち一人一人の個性と全く同じ力として潜んでいなければあかんねや。
つまり、ただ同じ〈ほんとうのこと〉が、この世界の現実の奥に隠れているか、個性的に表現されているかという違いでしかないねん。
ウミ・・・君の個性とは、人格とは・・・単に他の人とは違うというそれだけのことでなく、
〈ことば〉があなたとして限定されたものなのだよ。
君は、世界に一つだけの、ユニークな、かけがえのない存在やで。
誰も、君に取って代わることはでけへん。
それが真の個性や。
〈ことば〉は成長し発展する。
それが宇宙であり、〈星の海〉や。
〈ことば〉が生成発展の極致に至ったところ・・・それがあなたという個性なんやで。」
「ウミが・・・〈ことば〉の生成発展の極致・・・。」
「もちろん、ウミ、あなただけでなく、ソラもレイもハルも、みんなそうやで。
本当の〈ことば〉と一人一人のかけがえのなさやユニークさは、相反するものやない。
そのユニークさを最大限に発揮することによって、本当の〈ことば〉を・・・すべてを覆う〈ほんとう〉をあらわすことが出来るんや。
本当に個性的になればなるほど、宇宙ぜんたいの〈ほんとう〉に近づくことが出来るんやで。」