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ワンネス

その時、大地と天空が裂け、〈永遠の君〉が姿を現した。


その周りには、天を覆うほどの無数のダイモンの群れが飛び交っていた。


「ようこそ。

ウミ、レイ、ハル。

ここは、聖なる地、アク・アパッツァ。」


三人は、自分のいる場所が恐れ多くなり、靴を脱いで、膝をつき頭を下げた。


〈永遠の君〉は、青色でもなく、黄色でもなく、金色でもなく、赤でもなく、白でもなかった。

長いものでも、短いものでもなかった。

直線でもなければ、曲がってもいなかった。

明るいものでもなければ、暗いものでもなかった。

男ではなく、女でもなく、男でも女でもないものでもなかった。


しかし、〈永遠の君〉は、人間の言葉で人間に語り掛けることが出来たし、人間もまた〈永遠の君〉に自分の不完全な言葉で語り掛けることが出来た。

〈永遠の君〉は、無限で永遠でありながら、一人一人の深いところを生みの親育ての親よりも、いや本人自身よりもよく知っていた。

それゆえ、もし、〈永遠の君〉を知りたいと思えば、まずは、このかけがえのない自己の存在、己の〈こころ〉を知ること、本当の己と出会うことなのだ。



〈永遠の君〉は、一人一人の〈こころ〉のうち「から」も、うち「に」も同時に語り掛けた。


「あなたがたに、〈こころ〉の「隠されていない秘密」をお教えいたしましょう。


〈こころ〉は目で見えるものではなく、聞いたり、嗅いだり、味わったり、触れたりすることのなかにもありません。

〈こころ〉は見えるものでも、あらわれてくるものでもありません。


〈こころ〉は、さまざまな区別を離れています。

また、どんな理解をも離れています。


区別できないということからも離れており、

また、理解できないということからも離れています。


〈こころ〉は〈ツカミ〉から離れていますし、

〈ツカミ〉ができないということからも離れています。


〈こころ〉は分離、分断し、名付けられたもののなかにはないのです。


〈こころ〉と〈宇宙〉と〈気付き〉は、別のものではなく、ひとつなのです。


〈こころ〉と〈永遠の君〉は、絶対的に離れたものでありながら、どこまでもひとつなのです。」


あのレイでさえも、ついていくのがやっとだった。

いや、なまじ知恵があるばかりに、その知恵がこの世界ではすべて足枷、重荷となって、この光の中に自身を溺れさせた。


世界においては、知は力であり、知は人間を自由にするはずだった。

しかし、この〈場所〉においては、世界で通用したありとあらゆるものが全く役に立たなかった。



一方で、ウミはその生命の光の中にまったく何も考えずにゆだねひたって、丸まっている。

それは、まるで、お腹の中にいる赤ん坊のように思えた。


ハルは、ただ茫然としながらそこに立ち尽くしている。

とはいっても、〈永遠の君〉のうちにおいて、場所というものは何の意味も持たなかった。

自分が、座っているのか、立っているのか、生きているのか死んでいるのかすらも分からない。



〈はじめのこころ〉・・・それは、どこまでも静かで何一つ波風も建てず、穏やかで澄み渡っていた。

そうでありながら、激しく燃えるような活動を同時にすべての世界に行きわたらせていた。


見るものと見られるもの、

感じ取ることと、感じ取られるもの、

それらはひとつに合一していた。


見るはたらきの〈こころの智恵〉はそのまま見られる対象となった。


そこには、〈わたし〉はまだ現れていなかった。

〈それ〉もまだ〈わたし〉から離れていなかった。


知るということと、その対象が全く合一していた。


これを、あとでどのように名づけることも説明することもできたかもしれない。


たとえば、無我夢中であったとか、我を忘れていたとか、没入するであるとか。


しかし、それを後で振り返ってしまってからではそれはもはやそれそのものではない。



現在の現在。

絶対的なる現在の現前。


ただそれのみであった。


そこにすべてがあった。




その〈こころ〉は、ウミ、レイ、ハル、それぞれの個人に特有のものでありながら、それでいて、それぞれの個人を超え出ていた。


その〈こころ〉は時間、空間、個人を知っているため、時間、空間、個人以上のものであった。


〈こころ〉はただ、一人一人個々人のものであるかのように思われながら、そうではなかった。

〈こころ〉があって個人があるのであった。

〈わたし〉とは、〈こころ〉の中において限られた経験のごくごく一部の〈現象〉に過ぎなかった。


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