航海へ
「誰も人のいない、大自然・・・そうだ。
どこかの無人島にでも行ってひたすらゆっくりしたいよ。」
とハルはつぶやいた。
「島・・・といえば、レイの住んでいた絶海の孤島は?
そう、プリン島だよ。」
ソラが訊く。
「ああ・・・そういえば、私の島から、数時間ばかり漕ぎだしたところに小さな島があったけれど、そこには誰も住んでいなかったし、砂と岩と緑が広がるばかりだったわ。」
「そこに行ってみよう!」
一行は、船で再び大海に繰り出した。
レイは次々と新しい技術や機械を発明し、星を観察し、地形を観察し、正確に航海を勧めることに成功した。
それに、ガチャガチャとした大掛かりなカラクリは、しだいにコンパクトで簡単に持ち運びのできる洗練されたデザインのものまでに変化していった。
「すげえー、レイ!
天才というのはこういうことなんだね。
多分、レイがいなかったら、僕たちはどこにも行くことがっできなかったし、何もすることが出来なかったよ。」
「人類と世界を変え、幸福に導くのは〈ツカミ〉に他ならないわ。」
「ぼくはつくづく不思議に思うのだが、巨大な〈ツカミ〉というものは、たいがいバコアやティラミスみたいなたくさん人とモノが集まる場所にもたらされてしかるべきものだと思っていた。
高い山が、たいていは山脈の中にあるように、巨大な〈ツカミ〉の持ち主も、同じような人々の集団のなかに存在するべきだと考えていた。
しかし、なぜ、突然変異のようにレイ、君という天才があの島に現れたのか不思議で仕方ないよ。」
「あのね・・・いきなり私だけがああいう考え方をできるようになったのではないの。
お父さんからも、おじいちゃんからも、ひいおじいちゃんからも、ひいひいおじいちゃんからも、もっともっとそのまた前のおじいちゃんからもずっと、秘密にされてきた〈食べ物〉を、知恵と一緒に私は受け継いできた・・・。
それは、他の島の誰にも話してはならない、秘密と固く言われてね・・・。」
「秘密の・・・食べ物?」