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見えない世界

ティラミス国の「秘密の場所」には、見えない世界と通じる様々の術を持った人々がひっそりと暮らしていた。


「世界に住む多くの人間は、すべては物質のみから成り立っており、すべてを物質の働きによって説明できると考えている。

そのことが、人間にとって技術を進歩させてきたことは事実だ。

しかし、それだけでは説明できない、目にも見えず測ることもできない〈何か〉が働いていることも事実だ。


古代から、少し前までは、その見えない世界の力を身につける〈魔法〉は万人が研究するものであったが、今では怪しいものや迷信と見られており、こうして地下に葬り去られてしまったがね。


〈こころ〉は、肉体から離れても、なおも生きて見えない世界にいるというのが、我々の信じるところだ。

そして、見えない〈こころ〉の世界と、見える物質の世界は相互に作用しているのだ。」


その集落に住む仙人のような男は彼らに語った。


「もっともっと、そうした世界があることを知り、信じてつながりを持つことが、古代の人びとにとっては普通のことだったのだが、現代のわれわれは〈目が開けてしまった〉ゆえ、〈盲目〉になってしまった。


〈こころ〉だけの存在である者たちがさまざまに生きていて、わたしたちを日々助けてくれたり、知恵をくれたりする。

それは、風のように行き来する存在で、知性も意志も兼ね備えている。


彼らが、集まる聖なる場所というものが、このティラミスの地下水脈なのだよ。」


「へええ!

全然知らなかった。

何で誰も教えてくれなかったんだろう?」

ウミは目を丸くして言う。


「姫様、表の世界で、このことを直接に教えることは禁止されているのです。

なぜなら、このことは、決して教え込んだり、押し付けるべきものではなく、人間の内側から自然に湧き出してくるものに他ならないからですよ。


準備が出来たもののみに、教えはその姿を現すのです。

一方教えのほうも、あなたたちが準備ができるのを待っていたのです。」


「ということは、私たちはその準備が出来ていると言うことね。」


「然り。

私は見えまずぞ。

諸君らは、善き〈ダイモン〉の守護のもと旅が進められていますな。

ここに来たのも偶然では決してない。


お教えいたしましょう。

目に見えない世界の〈認識〉について。」


ソラとウミは、目を輝かせながら次の新しい学びに入るのを楽しみにしていた。


レイはいぶかしげな眼で遠くからそれを観察している。

「見たところ、この集落には知性も足らず、何でも感覚だけで信じ込みやすい者たちも多いが、中にはおそろしく知性のある者もいる。

なぜだ?

なぜ非合理的なものを臆面もなくあると思い込めるのか。

・・・そうか、みんなで同じ思い込みをすればそれは、生活を支配する力を持つようになる。

言わば共同幻想やルールとして実在しているかのように設定しているだけなのだ。」


ハルは、固まって、青くなり全身から汗を流し始めた。

「〈認識〉・・・〈認識〉だって?


・・・同じだ。

同じだった。

あのトルテの国も。


あの人びともやはり、〈見えない世界〉をあの王を宇宙皇帝として中心に据えた高度な体系を信じ込んでいた。


・・・その高度で緻密なスケールの大きい体系に比べて、言っちゃ悪いが、彼らの〈認識〉などかわいいささやかなものだ。

ザッハ・トルテの法のスケールが、クジラであるとすると、ここに居る人々の〈認識〉などわずかアリほどのものではないか?


・・・こんな程度の〈認識〉レベルじゃ、オレだってきれいに論破できる。」


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