予言
「さて、アベル」
リリアが椅子に腰掛けていう。
「予言を与えましょう。」
「なんだ?」
「それは…」
リリアが〈時見瞳〉を見開く。
次の瞬間、彼女の魔力が荒れ狂い、紫電を放出し始めた。
「!?…。鎮まりなさい。時見のチカラ。」
彼女は、必死に魔力を操り、チカラを抑えようとするが、うまくいかない。
「手伝おう」
俺は根源のチカラを少しづつ解放し、魔を打ち払う。
しかし、いつまでたっても相殺できる気配がない。
「ふむ。ラチがあかぬな。」
イングドゥを抜こうかと思ったところで、急に魔力が制御された。
「…収まったようですね。なんだったのでしょう?」
「分からぬ。ただ、なんらかの干渉があったようだ。」
「予言を、再開しましょう。」
リリアが再び〈時見瞳〉を開く。
しかし、それは心なしか淀んでいる気がした。
「…見えました、アベル。あなたの進むべき道が。」
そう言って彼女は魔法地図を描く。
「この島の最南端、迷宮ギガデアスに、あなたの目的のものが眠るでしょう。」
「ほう。俺の目的とはな。全く心当たりがない。」
「行けば、目覚めるでしょう。但し、誰かとともに行ってはいけません。これはあなたが一人で乗り越えなければならない試練です。」
とは言っても、どんな不利な条件の試練を出されたところで、俺が負ける気はせぬ。真っ当に捻り潰すのが俺のやり方だ。
「心配は杞憂だということも、お前には見えているのだろう。」
そういうと、リリアは静かに首を振る。
「あなたが試練に臨む間の様子は、この魔瞳に全く映りません。気をつけるほかないでしょう。」
「そうか。まあ良い。」
そう言って俺は踵を返す。
「お休みのところ邪魔をしたな。ゆっくり休むがいい。」
「…あなたに神の祝福がありますように。」
ほう。リリアが神などと口にするとわな。
「ああ」
特に気に留めず、俺は館を出た。すると、カイラが道端で草を抜いている。
「いつまで拗ねているのだ。」
そういう都会らはハッと振り向き、顔を綻ばせてこちらに駆け寄ろうとする。
しかし思いとどまったようにそっぽを向いた。
「お兄ちゃんなんか知らないもん。」
「そうか。そんなことより、少し出かけることになった。うちの番を頼んだぞ。」
カイラは驚いた様子で固まった。
「最南端の迷宮ギガデアスだ。まあ、散歩に行くようなものだから気にするな。」
すると彼女はハッと気がついたように、俺に叫んだ。
「わ、私も連れてってよ!」
「お前にはうちの番を頼んだはずだが?」
するとむくれた様子で、カイラは返す。
「だって寂しいもん…」
「ジイラに面倒を見てもらえ。それについてくると言っても、何をするつもりだ?油断すればお前なら一瞬で血の霧だぞ。」
カイラは一瞬怯むが、負けじと言い返す。
「私を連れて行かなかったら、きっときっと、後悔するんだから!」
「わかったわかった。土産は持ってきてやろう。ガイアドラゴンの宝玉がいいか?」
そう言って俺は歩き出した。
後ろからはなおも訴えが続いてくる。
「私を連れて行かなかったら、絶対絶対、後悔するんだからーー!!」
その声を聞きつつ、俺は〈転移石〉の魔法道具で、で、村の入り口まで転移した。
後悔するんだから、、、