世告げの姫
俺の根源からは、絶えず魔力が溢れ出している。
そのため、こうやって常に魔法武具を持ち出さなければ、周りのものを傷つけてします。
効果範囲は、俺のうちぐらいだが、それでも時たま、外にある村の結界魔法陣を傷つけては、迷惑をかけている。
生身で外に出れば、何が起こってもおかしくはない。
俺はイングドゥを担ぎ、服を着替える。
着替え一つでも、本来魔法が使えるところが、俺は手作業だ。
なぜなら、俺の根源の魔力によって、自らが描く魔法陣さえも壊すからだ。
灰のジャケットの上からコートを纏う。
そして、家を出た。
「あっ、お兄ちゃん!」
向こうから走ってくる少女が見えた。
「世告げの姫様が行っちゃうよ。早く行こう!」
そういって手を引っ張ってくる。
「そう急かすな、カイラ。コケるぞ」
俺がそういったときには、彼女はもう足を滑らせ、見事なまでにズッコケていた。
「イタタ、、」
「相変わらず幼いものだな。俺の妹とは思えぬ。」
「そんなことないもん!泣かないし。」
犬歯を剥き出しにして、カイラは叫んだ。
彼女は、俺の妹。
俺とは似ても似つかず、魔力は弱いが、優しい心を持つ九つの少女だ。
「強くあることだ。」
そういって頭をポンポンと叩き、俺は歩き出した。カイラもこくりと頷き、トコトコとついてくる。
ようやく、館についた。
扉を叩き、呼びかける。
「まだ起きているか、リリア。」
そう言うと、中から若い女性が出てきた。
「随分と遅かったですね、アベル。あなたが今日くるのはわかっていたのですが、予言のチカラが弱まったのかと思いました。」
そういって、リリアは微笑む。
彼女が、この村の主、世告げの姫だ。
この俺が、魔瞳をきちんと見開かなければ、全貌が見えぬほどの魔力を持つ。
「お前の予言は外れることはない。例え、世界が終わろうともな。そうだろ?」
俺はリリアをみて言った。
「そうであれば嬉しいですね。」
「疲れてはいないのか?そうであれば出直すが。」
リリアは首を振った。
「いいえ、今日は是非ともあなたに聞いてほしい予言があるのです。」
「ならば良い」
俺は、館の中に入る。続いて、カイラも入ってこようとするが、リリアが即座に魔結界を張った。
「え?なんで?リリアさまあ。私もお兄ちゃんの予言聞きたい!」
リリアは静かに首を振る。
「いいえカイラ。予言というのは、様々な要因の上に成り立つものです。誰か一人でも違う行動を起こせば、全く違う未来が訪れてしまいます。私は予言の通りに、人々を導かなければなりません。」
リリアはカイラを諭すようにいうも、カイラは渋る。
「とのことだ、カイラ、そこらへんで遊んでおけ。すぐに戻るからな。」
「ええー。お兄ちゃん!」
「行こうリリア。こいつに言葉は通じぬということも、お前はわかっているはずであろう。」
「ええ。」
なおも訴えるカイラを尻目に、俺たちは予言の間に入った。
アベルを待ち受ける予言とは一体なんなのでしょうね。