誕生日
生温かーい目でご覧くださいね。
ーー目覚めよーー
ーーお前の居場所はここではないーー
ーー破壊の神の傀儡として、歯車のごとく回
り続けるがーー
ーー五つの根源の宿命だーー
轟音が響き渡り、俺の意識が現実に戻ってくる。
「何だ!?」
外を見ると、黒焦げの箱の周りに、子供達がたくさん集まっていた。
「あー」
「真っ黒焦げー」
「残念無念」
彼らは残念そうにしている。
「…何があったんだ?」
すると、彼らはハッとこちらを振り向き、更に肩を落とす。
「残念」
「起きちゃったー」
「内緒の作戦」
「大失敗っ」
彼らは口々に言いながら、俺から逃げていく。
俺が起きたのを見てがっかりしていたようだが、何があったのだ?
「ああ、おはようアベル」
俺の向かいに住む、ジイラが声をかけてきた。
ふっくらとした体形で、穏やかな顔立ちをしている。
「ここにいた子供達が何をしていたのかわかるか?」
するとジイラはクスッと笑う。
「鈍感なんだ、アベルは。」
さて、分からぬ。
「今日はアベルの誕生日でしょお?だからプレゼントを作ってたのよ。錬金で。けど、失敗しちゃったみたいね。」
なるほど
それは残念だったな。
「でもあの子達は、また作ってくると思うわよ。」
それは微笑ましいことだ。
「次は消し炭にならぬよう期待しておこう。」
「そうだといいね。」
するとジイラが、ハッとしたように俺に言う。
「そうそう、アベルは今年で17でしょ?」
「そうだが?」
「じゃあ、世告げの姫様に、成人の道しるべを聞きにいったほうがいいよ。」
ここ、ラルガの村では、17が成人だ。
もっとも、この島から誰も出たことがなく、島唯一の村なので、ほかがどうかは知らぬのだが。
「そうだな」
世告げの姫とは、この村を治める主である。
その名の通り予言のチカラを持ち、その力を利用してこの村は回っている。
姫は世告げのチカラを溜めるため、ほとんどの時間を寝て過ごす。
朝の予言を終えると、彼女はチカラを使い果たし、眠りにつくのだ。
「できるだけ早くね、世告げの姫様は今日はこの一時間しか外に出てこないから。」
「わかった。」
そう言い残して、俺は橋の向こう側にある主の館を目指すことにした。
「…おっと、忘れていた。」
俺は一度家に入り、中央にいった。
「姿を見せよ。」
俺がそう言うと、隠蔽を解いて、漆黒の大剣が姿を現わす。
俺がそれを手に取ると、剣の魔法文字が踊り、俺と根源を浸蝕する。
これは、俺の並々ならぬ魔力を抑える、魔法武具。
浸蝕の大剣イングドゥだ。
彼のチカラはどれほどなのでしょうかね。