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エピローグ

 それから数日が過ぎた。

 市立漣中学校女子ソフトボール部の狭い部室の中には、現役五人の部員と、彼女たちを有り難くも激励しにやって来た前部長の姿があった。

 そんな中、現副キャプテンの美里が口を開いた。


「ホント、ウチの顧問ってダメな奴だよね……。練習はウチらに任せっぱなし、挙句の果てにはあんな子供じみたイタズラまでしてさ……」


 生憎の雨が部室の窓ガラスを打っている。

 グラウンドで練習ができない代わりに、今回の事件で結果としてボールの有難味ありがたみを知った部員達は、総出で汚れたボールを雑巾で磨いていた。

 その手を休めることなく、咎めるような眼差しで南が美里を見た。


「ミサト、あんた本当に顧問があんなことしたと思ってるの?」

「え、そうじゃないの? 私はそう聞いたけど」

「だって、考えてもみなさいよ……」


 話し続けようとする南の肩に手をやり、その口を塞いだのは前部長だった。


「そういうね、知らなくてもいいことは知らなくてもいいのよ」

「……。そうですね、阿部先輩」

「ちょっとお、どういうことなの? 私が知らなくて南が知ってることって」

「だからさ、もういいのよ」

「ええー!? ぜんっぜん、良くない!」


 そのとき、わあわあ騒がしい部室の扉を開けたのは例のサッカー部のエースだった。


「よう、如月。ボール見つかって良かったな。まあ、俺としては見つからずにそのままウチの部のマネージャーになってくれた方が良かったんだけど」

「ふん、大きなお世話よ。それに私、ソフト部は絶対に辞めないから。五人の部活が弱くったって美しくなくたって私の存在価値がそこにある限り、絶対に辞めない。

 ……それよりさ、アンタこそソフトボール部の男子マネージャーにならない? 歓迎するわよ」


 一年の中山香の目が、キラリ輝いた。

 どうやら平野先輩が一緒の、バラ色の部活生活を妄想したらしい。


「いや、俺は遠慮しとくわ。……じゃあ、気が変わったらよろしく頼むな」


 平野は立てた人差し指と中指を額に当て、颯爽と消えた。

 珍しく感情を露わにして怒る阿部葵が、今磨き終ったばかりのボールを平野が閉めたばかりのドアに向かって投げつけた。


「何よ、あのいけ好かないヤツ! ミナミ、絶対あんなのにひっかかっちゃだめだからね」

「大丈夫、ひっかかりませんよ……。ところで先輩、いいんですか? もうそろそろ受験勉強を始めなくても」


 うっ……。


 痛いところを突かれたらしい、阿部先輩。

 まるで弾丸に射貫かれたかのように胸に手を当て、そっくり返るような素振りをしたものの、反動で元の体勢に戻った時にはいつも通りの澄まし顔が戻っていた。


「ふん。とにかく今は新しい部員を集めることが先決よ! そうでなくちゃ、私も勉強に身が入らないじゃない」

「はあ……」

「さあ、もうボール磨きは終り。部員獲得のための作戦会議を始めるわよ。さあ、意見がある人から発言して!」


 プレハブの部室はその後、日暮れまで楽しそうな黄色い声で満たされていたのだった。



 <おわり>

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