カボチャパンツと建築(2)
俺に頭を撫でられた月夜は、最初は驚いた顔をしたものの、すぐに顔を赤くし、へへへと笑った。
初めより、月夜の笑顔が増えた気がする。
俺はそれを素直に嬉しいと感じていた。
「よっし。じゃあグランディが戻ってきたし、今の小屋じゃ狭いから建築をしよう」
「建築?」
「そう。今の小屋だと、五人が限界なんだよね。これからキノコの娘が増えるには、小屋を大きくする必要があるの。建築の指示の出し方を説明するから、ご主人はパソコンの前に来て」
月夜はすっくと立ち上がる。
その顔はやる気満々で輝いていた。
「ごめんね、月夜ちゃん。身体が動けば私がやるんだけど……」
「いーよいーよ。グランディはしっかり休んで、しっかり乾かしてて。あと、小屋のドアは開けておくから、デストが来たら呼んでね。さ、ご主人、行くよ!」
「ああ」
俺は月夜と一緒に小屋の中に入った。そして、パソコン机のイスに座る。月夜は俺の隣に立った。
「やり方は探索の時と同じで、建築させたいキノコの娘を選ぶだけ。じゃあご主人、メニューから建築を選んで」
俺は画面の左側に並ぶメニューから建築を選び、カーソルを合わせてマウスをクリックする。
すると、新たな項目がメニューの右側に出てきた。建築と増築が表示されている。
「建築は新しく建物などを作る場合。食料庫や資材置き場などの建物、畑や植林場の為の整地とかね。探索して広げたエリアを使うには、まず建築から作業指示を出さなければならないの」
建築を選ぶと、地図が出てきた。前回、見た時には一マスしか色が付いていなかったが、今は小屋があるマスの上のマスも緑色になっている。
もっと探索をすれば、この色の付いたマスがさらに増えるのだろう。
「建築はまず先にエリアを選ぶんだけど、今回したいのは増築だから戻ってね」
俺は月夜に言われた通りに、右下の戻るボタンをクリックし、前の画面に戻った。
「増築は建築したものに指示が出せるの。建築ではいきなり大きなものは作れないから、増築で段階を踏んで大きくするようになってるのよ。じゃあ増築をクリックして」
俺は増築のボタンをクリックする。また地図が表示された。
「小屋の増築だから小屋のあるマスをクリックしてね」
小屋のある中央のマスをクリックする。すると、必要資材と表示されたページに切り替わった。
木と石やツルなどの文字の横に、数が示されている。その下には使用しますか? と書かれ、はいといいえのボタンがあった。
「資材は元々あったものと、今回の探索で得た資材で十分足りてるみたいだね。増築出来るから、はいを押して」
はいを押すと、探索でも見た五つの茶色い枠が現れた。
「あとは探索の時と同じ。キノコの娘を選ぶだけだよ」
茶色い枠の内側をクリックすると、画面が切り替わり、キノコの娘のイラストカードが表示された。
カードは二枚。
グランディのカードが新たに加わっている。
俺は隣にいる月夜を、こっそりと盗み見た。
月夜はパソコンの画面を見ながら、微笑んでいた。
本当に嬉しそうだ。
月夜の嬉しそうな顔を見ていたら、なんだか胸の奥が暖かくなったように感じた。
俺はそっと画面に視線を戻した。
「……あっと、それじゃあグランディは休ませるから、月夜のカードを選んでね」
俺は月夜のカードを選ぶ。茶色い枠の中に、月夜のカードがおさまった。
「カードはあと四枚選べて、キノコの娘を増やすと作業時間の短縮が出来るの。探索でも集めてくる資材量が増えたりするから、複数で作業する方がいいんだよ。でも、今回は私だけでやるから、このまま作業開始させてね」
「オッケー」
俺はそのまま増築開始ボタンをクリックした。
「よーし! やるぞー!」
気合いを入れて大声を出し、月夜は腕捲りしながら外に出ていった。
俺も外に出る。
月夜はさっそく小屋の周りに資材を置き始めていた。
「近くにいると危ないから、ご主人はグランディと一緒に離れててね」
グランディは、と見ると、さっきの位置にグランディがいない。
「ご主人様ー!」
グランディの声が聞こえ、反対側を見ると、小屋から離れたところでグランディが横になっていた。場所を知らせるように、手を振っている。
俺は小走りでグランディのもとに向かい、グランディの隣に腰をおろした。
「月夜かなり張り切っているよ」
「そうですか……。本当なら私がすべきなのに……」
「どういうこと?」
グランディを見ると、グランディは眉を下げて申し訳なさそうな顔をしていた。