カボチャパンツと建築(3)
「キノコの娘には向き不向きがあるんです。月夜ちゃんは毒キノコからキノコの娘になったから、戦闘の方が向いているんです」
「ん? 毒キノコからってどういうことだ?」
「あれ? 月夜ちゃんから聞いてません?」
そんなこと聞いていない。
俺は首を横に振った。
「あー、きっとはしょったんですね。プロフィールに載っているから読めば分かるし」
プロフィールはあのイラストカードに書かれていたやつだろう。
体力などもあのカードで分かるし、なんと便利なカードか。
「キノコの娘は元となるキノコがあるんです。私たちキノコの娘は、その性質を引き継いでいます」
「へー」
「月夜ちゃんはツキヨタケというキノコで、人間界ではキノコ食中毒の御三家と呼ばれるほどの毒キノコです。毒キノコのキノコの娘は攻撃力が強く、戦闘に向いています。特に月夜ちゃんは猛毒キノコなので、戦闘に特化しているんですよ」
俺は探索の時の月夜を思い出す。
あの時の月夜は、デストを余裕で倒していた。
「なるほど」
「私はオオオニテングタケ。未だ食毒不明のキノコです。この身体なので、建築に向いています」
確かにグランディのように大きければ、月夜より楽に建築が出来そうだ。
「だから私がすべきってことか」
「そうなんです。私がいない間、月夜ちゃんには苦労させてしまったみたいだし、早く作業出来るようにならないと……」
グランディは起き上がろうとしているのか、頭を上げたり下げたりを繰り返す。
「ふむ!」
かけ声とともに腕を振ると、グランディの身体が少し浮く。が、すぐに倒れる。
「あと少しー!」
「そんな無理しなくても……」
俺が止めるのも聞かず、グランディは起き上がろうとする。
何度も何度も腕を振って勢いをつけて、バッタンバッタン浮いて倒れる。
「おいおい……」
そんな何度も倒れたら痛いだろうに……。
だが、グランディに止める気配はない。
「あともうちょい……!」
グランディの身体が斜め六十度まで起き上がる。
「ふん!」
腕を回し勢いにのって、グランディの身体が九十度になった。グランディは足を引き寄せて女座りになる。
「やったあ! 起きれた! ってあれ?」
九十度が百度、百度がさらに傾いていく。
「危ない!」
「きゃあ!」
顔から地面に突っ込んでいくグランディを支えようと、俺はグランディの前から両肩を掴んで押さえた。
「ぐっ」
これは……。
ダメだ!
グランディの身体は重くて支えきれない。
俺の身体も後ろに倒れていく。
「ぐえ」
俺はグランディに押し潰された。
大の字の俺の真上にグランディがいる。
とっさに顔を上に向けたので息は出来るが、俺の顔はグランディの柔らかく大きな胸に包まれていた。
圧迫されてはいるが、ふわふわの感触は気持ちがいい。
本日、二度目のパイ包みであった。
「ご、ごめんなさい〜」
「あ、そ、それは!」
グランディが起き上がろうとしているのか、俺の顔の上でグランディの胸が離れたり密着したりする。
「ちょ、ま、こ」
これは!
柔らかですべらかな胸が、ぷよぷよと絶え間なく顔に押し付けられる。
顔を包むほどの大きな胸が、俺の前を行ったり来たり。
弾力とポヨポヨの二重奏。
最高である。
この感触をしばらく楽しんでいたい気持ちが、むくむくと起き上がってきた。
ついでに別のところも起き上がりそうだ。
「ごめんなさいご主人様。起きれないので、下から押してくれますか?」
「お、押す?」
「はい、押してください」
俺は押せそうな場所を考える。
肩は目の前の胸が邪魔をして押せそうにない。
腹は下の方にあって力がうまく入りそうにない。
ということは……?
「ご主人様? どうしました?」
「お、おう」
俺の喉がゴクリと鳴る。
これは仕方ないんだ。
俺が故意にやるのではなく、グランディに頼まれたからやるんだ。
投げ出されたままだった腕を少しずつ縮めて、グランディの身体の下に潜り込ませていく。
腕に柔らかな胸の感触が伝わる。
これがもうすぐ俺の手に。
早く両手の中に実感したい。
わし掴み、持ち上げるようにして、この胸の中に手を埋もれさせたい。
グランディの下敷きになっていて窮屈だが、俺ははやる気持ちにかきたてられて、腕をぐいぐいと無理やり引き寄せていく。
「ご主人様くすぐったいです」
「も、もう少し」
「何がもう少しなのかな?」
俺はグランディではない声にビクリと止まった。
これはヤバい……。
視線を上に向けると……。スカートの中のカボチャパンツが見えた。
「月夜……」
上がっていた体温が急激に下がる。
特にとある一部が著しく下がった。
「あ、月夜ちゃん? 助かったぁ。起きれなくなっちゃったから手を貸してくれる?」
「うん、いいよ」
俺から胸が離れていく。
温もりが消え、やけに冷たく感じる空気が、俺の上を通った。
「ありがとう月夜ちゃん」
グランディはふらふらしながらも座り、月夜に片手で支えられてお礼を言っている。
「いいよいいよ」
月夜はにっこりと笑って、グランディに答えた。
そして、そのまま寝そべっている俺に視線を向けてくる。
「ご主人。起きたら?」
「は、はい」
笑った顔のままだったが、その声はどこか寒々しかった。
俺はすぐに立ち上がり、直立不動になる。
「月夜ちゃん増築は?」
「終わったよ」
「え! 早いね」
「ずっと外にいるのも危ないし、残り少ない時間短縮の道具を使っちゃった」
「そっかあ。それで早かったんだね」
月夜とグランディの仲の良さそうなやり取りを見て、なんだか心が痛くなってくる。
いや!
不可抗力だろ!
あんな素晴らしい胸があれば、誰しも揉んでみたくなるだろ!
しかも、揉める言い訳が揃っていて、グランディも触っていいと許可を出しているんだぞ!
こんな好条件を見逃すやつがいるか?
いや、いない!
「ご主人様ー?」
ハッと気が付くと、グランディが荷車に乗せられていた。
「どうしました?」
「あ、いや……」
グランディを荷車へ乗せているのに、全然気が付かなかった。
考え事に没頭し過ぎていたようだ。
俺はチラリと月夜を見る。
月夜はそっぽを向いていた。
表情が見えない。
……これは怒っているのか?
「……一応、グランディを助けようとしたって聞いたから」
そう言って、月夜は荷車を押して小屋に歩いていった。
どうやら怒ってはいないようだ。
俺はほっとする。
今度から気を付けよう。
俺はそう思いながら、月夜たちの後を追った。




