ブクレシュティの人形師
遅れてすみません。昨日寝落ちしちゃった
黒幕的な存在に心当たりはない。ただ負ける要素はないと思えるので、多少気を付けつつ勧誘は続けることにした。
「じゃあ今日も行ってくるわ。夕方には帰る」
「行ってらっしゃい、今日も盛り上がるからちゃんと時間守ってね」
毎日宴会で大丈夫なのか、休肝日ってのはないんだろうか。スキマを開いた先は何も考えていない。どこなのか楽しみだ。
「で、ここどこ?」
出てきた場所は一面銀世界、季節は夏のはずなんだが。誰もいなさそうだ、白熊ぐらいか。
「おお、さむっ。場所変えようっと」
俺はまた別の場所にスキマを開いて、この地を後にした。
今度は町がちゃんとあった、しかもかなりにぎやかだ。建物も中世っぽいのがたくさん立ち並んでいる。ここなら勧誘できそうだ。まずはいろいろ調べないと。
「すみません。ここなんて名前の町ですか?」
と通りすがりのおじさんに聞いてみた。
「そんなことも知らんのか、お前さんは。ここはブカレスト、ワラキア公国の重要都市だ」
「そうだったんですか。ありがとうございます」
ブカレストか。ルーマニアなのか、とはいっても土地勘もないので取り敢えずふらふら歩いて探してみる。
「しかし、細い路地とか多いな。迷いそうだ」
と歩いていると、ふと気になる看板を見つけた
ブクレシュティの人形店
ブクレシュティ?どこかで聞いたことがあるな。入ってみよう。
「すみませ~ん。誰かいますか?」
と恐る恐る入ると、そこでは数十体の人形が動き回っていた。そこから延びる細い糸の先には、椅子に座ったお婆さんがあった。
「おやおや、珍しいお客さんだこと。ここはふつうのひとにははいれないばしょになってたはずなんだけどねぇ」
「普通のひとじゃないぜ。俺は廿楽遊助。あんたはもしかしてアリス・マーガトロイドか?」
思わず聞いてしまった。俺の記憶ではこんな風に人形を動かせるのは一人しかいないからだ。
「ほほほ、マーガトロイドまではあっているわ。私はエルザ・マーガトロイド。アリスは私の孫です」
こんな女性がいたなんて初めて知った。
「じゃあアリスは今どこに?」
「奥にいますよ。彼女もゆくゆくは魔法使いになりたがるでしょうから魔法の勉強をさせています。アリス、お客さんですよー」
とエルザが呼ぶと、屋から小さな少女が出てきた。幼いが服も髪型もアリスだ。
「お兄さんは、だれ?」
と聞かれた。やっぱり警戒してるな。
「俺は廿楽遊助、怪しいものじゃないよ。そこらへんをふらふらしてたらこの店が気になってね」
というと、アリスはここが魔法でおおわれて隠されていたことを知っていたようで、
「ならお兄さんも魔法使いなのね、よろしく!私アリスマーガトロイド」
と返してきた。
「いや、魔法使いじゃないけど、よろしく」
とあいさつをしていると、エルザが
「あなたふらふらしていたなんて嘘をついてはだめですよ。私にはちゃんとわかるんですから」
と言われてしまった。ポーカーフェイスが苦手なんだな、俺って。
「そうです。実は幻想郷というところから来まして、そこの新しい住民を探していたんです」
「そうですか。でも残念だけどうちはそちらに行くような理由はないわ。お断りします、でもうちに遊びに来るのは全然かまわないわよ」
「ありがとうございます」
ダメだったか。とりあえず今日のところは一度帰るか。
アリスからおぜうさまにどうつなげるかな




