陰陽師の反省会
オリキャラいいな
「あははは、やりましたわ。式神のお人形さんたちは失いましたけど、あれだけ強いのを倒せたのならそれでもいいわ。これで私はまた成長しましたわ!」
既に一流の陰陽師である少女、安倍晴明は日が沈み暗くなった道を歩いていた。彼女は今式神も呪符も護符もすべて使い果たし無防備な状態であったが、それが気にならないほどいま彼女はうれしかった。なにせ妖怪の中でも最上級の強さを誇る鴉天狗と、それより明らかに強い男を殺したのだ。今までいろんな妖怪を殺してきたが、声明は一番うれしかった。
「とにかくこれで私の評判がまた上がりますわ。早く家に帰らないと」
と家へと向かう足を速めていたとき、草陰から、何者かが出てきた。
「おめぇが安倍の晴明か。なんだ女じゃねぇか。これなら殺せそうだな」
「なんですの?」
草陰から現れたのは人ではなく、牛の顔に、鬼の体、牛鬼であった。
「牛鬼なんて、厄介ですわね。でも私の手にかかれば・・・」
晴明は懐を探ったが、お札は何もない。
「どうした?何もしないならこっちからいくぜっ!」
牛鬼が体当たりをしてきた。普通の人なら避けられないが、晴明には朝飯前であった。
「そんなの、当たりませんわ!」
晴明は横に飛んだ。しかし、それが問題であった。その後ろには、もう一体妖怪がいたのだ。
「ふへへ、捕まえたぜ」
「障らないでくださいまし。離しなさいっ!」
と声明が振りほどこうとするも、振りほどけない。牛鬼もこちらに向かってきた。
「お前はこれでもくらいなっ!」
と牛鬼は口から紫がかった霧を吐き出してきた。後ろにいた妖怪、馬頭鬼はそこから離れた。
「これはっ!?・・・ごほっごほっ」
「俺の毒を食らった気分はどうだい?最初は軽いが、吸うと体のいたるところから血が噴き出すぜ」
晴明は逃げようとしたが、体が少し重く、飛べなかった。
「逃げないとは恐れ入った。ならおれたち二人の相手をしてもらおうか」
「まだ、ですわ・・・」
晴明は毒に蝕まれたからだで、二人の妖怪に向かっていった。
そのころ、遊助は、特に問題もなく生きていた。文も回復薬が効いて、動けるようになっていた。
「しかし、文。全く災難な奴だったな」
「ほんとよ。死ぬかと思ったわ」
「いやあ、俺もスキマ作らなかったらただじゃすまなかったよ」
遊助と文は壊された家を取り敢えず直した。
「で、どうする。もう日も沈んじゃったし、夕飯にしましょうよ」
「そうだな」
と夕飯を作ろうと遊助が立ち上がった時、
「いやあぁぁぁぁぁぁ!」
と言う叫び声が聞こえた。
「おい文、疲れてるところ悪いが行くぞ」
「スクープのにおいがしますね。行きましょう」
文と遊助は声のした方向へ向かった。
「へっへつ、もう動けねえのか。最強の陰陽師さんよぉ」
「くっ、まだですわ・・ごふっ」
晴明はあの後攻撃を続けたが、体術、それも少女の力では限界があった。次第に毒が体に回り、目からこぼれてきたのは涙ではなく血だった。
「だが、お前はまだ死ねねぇぜ」
「?」
「言ったよな、俺たちの相手をしてもらって」
「いや、まさかそんなの嫌。いやあぁぁぁぁぁ!」
晴明は這いずって逃げようとしたが、それももうできそうにない。
「嫌、私まだ・・・」
「ならなおさらだな」
牛鬼と馬頭鬼がじりじりと近寄ってきて、晴明はもう駄目だと目をつぶった。
「おっと、そこまでだ」
「?なんだ、お前。俺たちに殺されてぇのか?」
「いや、ただそいつを離してやってくれないか?」
「どこのどいつかしらねぇが俺たちに口答えするんじゃねぇ!」
牛鬼と馬頭鬼が持っていた棍棒を振り上げてきた。
「言ってもわからないなら、仕方ない」
その男は手を水平に振った。すると次の瞬間2人の首が宙を舞った。
「やっぱ弱いな。大丈夫か、晴明ちゃん」
「うそ、私が殺したはずでは・・・」
「あんなんじゃ俺は殺せないよ」
「強がらないでよ遊助」
晴明は混乱していた。殺したはずの二人が生きていたのだ。遊助はあの牛と馬を殺したが、私を生かしておくとは限らない。
「お願い、殺さないで、まだ死にたくない・・」
「何言ってんだ?別に殺さないよ」
「え・・・?怒ってないの?」
「別に」
「私もですよ」
晴明は不思議だった。どうして殺されかけた相手に怒らないのか、よくわからなかった。
「ただ、一つ反省してほしい」
「え?」
「これに懲りたら、人んちを吹き飛ばすとか手荒なことはするな。わかったな?」
「え?そんなのでよければ」
「よしっ、じゃあもう帰れ。あ、でも毒くらってるみたいだからこれ飲んどけ。さあ、帰った帰った」
晴明は半紙に包まれた粉薬を飲まされて追い返された。
「しかし、これでよかったの遊助?私別に怒ってないわけじゃないんだけど」
「生きてるんだからいいだろ、許してやれよ」
「もうっ!死ななきゃいいってもんじゃないでしょ。今日は私の相手をしてもらうからねっ」
「はいはい」
遊助と文もまた月明かりに照らされながら家に帰って行った。
ちょっとR15を超えた、かな?