春までの時間
由々子編はそんなに長くないよ
由々子が次の春に死ぬかもしれない。今が秋で大体10月ぐらい。桜が咲くのは、3月、4月くらい。もう半年あるかないかだ。紫には言っていないが、由々子はだいぶ生気を吸われているから、性格の方も暗くなってくる。紫には伝えるなと言われたが、伝えておかないと彼女が傷つくことになるのかもしれない。
「また由々子のこと考えてるでしょ」
後ろから現れた紫にとがめられてしまった。やっぱり話そう。
「紫、実は「知ってるわよ」・・・・?」
「あら、私が気付かないと思ったのかしら。庭番と二人でこそこそ話してるから、スキマ使ってみてたのよ」
「しってたのか」
「そうよ、由々子の命が長くないってことはもう知ってるわ」
「なら、由々子のために死ぬまでは、普通に接してやってくれないか」
「いいわよ。でも私は諦めないわ。必ず助ける方法を見つけ出す」
「そうか」
西行寺邸につくと、すでに由々子が縁側でお茶を飲んでいた。
「よう、由々子」
「遊助、紫、いつも来てくれてありがとうね」
「気にすんなよ。俺は紫についてきてるだけだ」
「いや~ねぇ~、本当は私に会いたかったんでしょ?紫についてきたなんて嘘はお見通しよ」
「お前、そんな話し方だっけ?」
すると由々子は顔を赤くし、
「ち、ちがうわよ。もぉ~、遊助のバカぁ~~」
と怒ってきた。後ろでは紫が、
「遊助の周りには勝手に女が増えていく、これは早く何とかしないと・・・」
と紫がブツブツ言っていた。正直怖いぞ、紫。
「わかった、わかった。俺もお前に会えてうれしいに決まってるだろ」
「そ、そうね。ありがと///」
顔がもっと赤くなった。紫と似ているな、こいつ。まだ顔が赤い由々子が口を開けた。
「じゃあ、今日は何をして遊ぼうかしら」
「また俺が昔話すんの?これ」
「ならそれで決定ね」
自分の数億年の人生の話のうちの5万年くらいを話している所で、二人は力尽きてしまっていた。まあ6時間も話を聞いていたら寝ちゃうのも無理はないだろう。紫は大人ぶっててもまだ子供だしな。すると後ろから聞き覚えのある女の声がした。
「遊助、こっち向いて」
「ん?おまえはひ、んん、んむむむぅ!」
「驚かないでよ、キスしただけでしょ」
「はあはあ、急にされたら驚くぞ、ひなた」
俺の目の前にはひなたがいた。
「久しぶりね遊助、また嫁を増やそうとしているのかしら?でもこの娘たちまだ子供よ。まさかそういうのが好きなの?」
「違うわ!からかうなよ、こいつらのお守みたいなもんだよ」
「そう、最近私も入れないようなところで住んでるから、会えなくて寂しかったのよね。で、今あなたは、あの庭の桜をどうにかしたいと思ってない?」
「わかるのか」
「そりそうよ。あんなバカでかい妖力ため込んだ桜、人がいる界隈にはおいておけないわよ」
やっぱり気づくな。でも解決できるのか。
「ひなた、実はそこの女の子を助けてほしいんだ」
俺は由々子を指さした。
「この子?成程、確かにかなり危ないものがついてるわね」
「このままじゃ、次にあの桜が咲いた時死んじまうんだ。何とかならないか?」
ひなたは少し考えた後、首を横に振り
「無理ね。私やパパにもこの手のものは解決できないわ」
「そうか・・・」
ごめんな、由々子。助けられそうにないよ。
「でも魂だけなら救えるわよ」
「?どういうことだ」
「彼女の魂はあの桜の影響を受けないようにすることができるってことよ」
生かすことはできない。でもせめて魂だけでも、
「どうするんだよ」
「彼女の死体を桜の根元に埋めて、この文句を唱えるだけよ」
と彼女は俺に文字が書かれた半紙を渡してきた。
「あとは自分で考えなさい。大丈夫、あなたは太陽の神天照大御神の夫なんだから」
と彼女は光に包まれて消えてしまった。
「どうしたものかな・・」
月明かりが、俺と寝ている二人を照らした。
例大祭が近づいてきている