半霊の庭師
幽々子が由々子になってるのはちゃんと理由がありますからね?
俺も一緒に行くようになってから由々子は前よりも明るくなっているということだった。確かに家に籠っているようには思えないほど明るい。笑っているし、ご飯もよく食べる。いたって健康な気がする。それでも彼女にはあの庭の桜の死の力がついて回る。俺の力ではどうしようもなかったし、ひなたにもできないようだ。彼女曰く、
「そのお父さんの桜への執着が強すぎたのね。妖力、霊力はあなたや私よりも高くなっているわ」
とのことだった。神でもどうしようもない桜とは、由々子のお父さん桜好きすぎたんだな。でもそのせいで由々子は家から出られないんだ。何とかできないのかな。俺が家の縁側で考え事をしていると、
「ゆーすけっ、行くわよ」
紫に声をかけられた。
「お、おう」
「なによ、元気ないわね」
「そうだな。由々子のこと考えてた」
すると紫は少し怒りながらこう言った。
「あなたに想ってもらえるのは幸せなことね。でも彼女に憐れみはむけないで。彼女は彼女なりにやってるんだから」
「すまないな」
「わかってくれたならいいわ。私のことももっと想ってね」
「へいへい」
俺と紫が西行寺邸に入った時は、すでに昼頃だった。
「二人ともおそーい。待ちくたびれちゃったわよ」
由々子が出迎えてくれた。そしてその後ろには初老の男がいた。
「いつもありがとうございます」
「いえいえ、暇なだけですから、妖忌さん」
この人は魂魄妖忌。西行寺家の護衛を務める男性だ。半人半霊というやつらしく、周りには人魂のようなものが浮いている。剣の腕は相当らしい。
紫も大人ぶっていても中身はやはりまだ子供なので、由々子と一緒に遊んでいた。すると後ろからぽん、と肩をたたかれた。
「遊助さん、ちょっとお話ししたいことが」
「妖忌さん、どうしたんですか?」
「ちょっとこっちへ」
妖忌さんは俺を二人のいる部屋から少し離れた場所に移動させた。
「実はあの西行妖なのですが・・・」
「西行妖、あの桜ですか?」
「そうです。あれが実はだいぶ力を蓄えておるようでして、由々子様にも影響が出るやもしれませぬ」
西行妖、桜は人の生気を吸い取るんだったよな。まさかそれが由々子にも。
「由々子にも何かあったんですか?」
「ええ、最近はうつろな目で桜を見つめたり、死にたいと言い出したりで。お二人がいるうちは大丈夫なのですが、それいがいは・・」
「そうですか・・」
あの桜は、誰にも止められない。由々子を死なせることになるかもしれない。
「ですから、その時のために、できる限り由々子様と一緒にいてくださいませんか」
「わかりました。由々子のためなら」
「ありがとうございます」
今は秋、桜はまだ咲かない。
このまま時代を追っていくと、時間かかりそう




