元の俺が見つかった
目を覚ましたところは今までいたところとは打って変わって暗闇の中だった。たぶん夢の中だろう。そう冷静に考えることができるのに不思議と目覚めようとは思わなかった。地面に仰向けに転がったままになっていると、遠くからこちらにむかってくる足音が聞こえた。そして俺の耳のそばまで来ると、
「よお、久しぶりだなぁ。お前の中は退屈すぎたし、俺も性格が変わっちまっててよ。力も制限されてて体の意識も奪えなかったぜ」
「だれだ、お前。俺と全く同じ顔だけど、いつ会った?」
「おいおい、忘れんなよ。俺はお前が妖怪、とかいうのになった時によく話したろ」
そこまで言われて、そういえばもう一人の俺的なのがいたような気がした。
「それが今になってなんで出てきた。まさかお前が俺が向こうの世界に転生する前の・・・」
「そう俺が元の人格だ。顔も昔はこんなんじゃなくてもっとかっこよかたっんだが、そっちの神様のダセェ顔にされちまってショックだぜ」
だんだんと思い出してきたが、前はこんな不良みたいな話し方ではなかったはずだ。人格に影響が出てるのがわかってるのに治せなかったというのは不思議なことだ。
「で、俺も記憶とかいろいろ戻ったしよぉ、悪いけどその体返してくれ」
「それはお前のお友達に行ってくればいいだろ。そもそも顔が違うんだろ?」
「そういえばそうだな。頼めば器の一つや二つ用意してくれるか。それで解決するなら俺はこっから出てくわ。迷惑かけて悪かったな」
奴はそう言い残して霧状になって消えた。本当に消えたのかどうかは知らないが、滅茶苦茶な奴だった。
いつの間にか目が覚め、俺の目の前には彼女が立っていた。
「どう?寝てる間に私のこと思い出した?」
「いろいろな。でもお前が連れ戻したかったほうの俺はでてったぞ。お前に器を作ってもらうとかなんとか」
「君の言う通り彼はきたわよ。でももういないわ」
彼女はなぜか首を横に振った。また向こうの世界に行ったとかそんなところだろうか。
「まあ、何にせよ俺はもう帰るからな。目的は達成しただろ?」
「そうね。でも、彼は私が消しちゃったから」
彼女は急に衝撃的な言葉を口にした。消したって一体どういうことだ。
「消したってまさか」
「私はあなたのほうが気に入ったの。だから彼には消えてもらったわ。今度はあなたなの」
ここで過ごしてきて彼女はそこまで悪くはないと思っていたが、どうもそうではなかったようだ。タチの悪いヤンデレだ。ヤンデレがたち悪いんだろうか、まあどっちでも今の状況に変化はないのだが。
 




