死んだかもしれないんだが
襲い掛かってきた少女の攻撃をよけようとしたのだが、座った状態からでは到底間に合わないスピードだったので、防御の姿勢をとってみた。
「君が神でも妖怪でも無意味よ。気の毒だけど、私たちにも目的があるから死んでね」
しかし彼女の声からは心配しているというような気持ちは感じられずいつの間にか持っていた剣を振り下ろしてきた。
「いいだろう(抵抗しないとは言っていない)、なんて認めるわけないからな!少なくともこの場では生き残るぞ」
かっこが付いてる時点でなんかおかしいのだが、そんなことを気にしている暇はない。勢いよく振り下ろされる剣を腕でガードしたところ割とあっさり切れ、俺の両手の肘から先の部分は重力に逆らうことなく地に落ちた。痛いといえば痛いのだが、もう慣れきってしまっているしすぐに元に戻せるからあまり気にならない。
「腕なんてすぐに作り直せるからなそれはお前も同じなんだろうがな」
俺は腕を捨て、立ち上がり後ろに飛んで彼女との距離をとった。
「あら、一撃で殺してあげたほうが君のためになると思ったのにそんなに痛い思いをしたいの?もしかしてMかしら?」
「違うな。目的もよくわからないまま殺されるなんて一番嫌だし、そもそも殺されたくない」
「そう。じゃあ一度殺してから事情を説明しましょう」
「え?殺してからって話聞いて・・・」
殺してからはだきっと三途の川にでも行くんだろうが、そこで話は聞きたくない。それを言い返そうとしたとき、彼女は俺とほぼ密着していた。一瞬で距離を詰められたようだ。
「聞いてるわ。事情は説明してあげるから死んで私たちのために君はここで一度おしまい」
彼女の持っていた剣が俺の腹を貫いた。なぜか刺されたまま動くこともできず、俺の意識は先ほどのように闇に落ちた。
どのくらい時間がたったのかは知らないが、次に目を覚ました時、頭の上では普通に太陽が光っていた。なんだ幻想郷かと思って起き上がり辺りを見渡してみると、どうも様子がおかしい。幻想郷にはない近代的な建物が多く立ち並び、しかし人は全くいない場所に来てるようだ。そもそも生き物の気配がほとんど感じられない。
「ここって一体・・・、東京や京都って感じでもないし、そもそも俺のいた世界ではない気がする」
「そう、その通りよ」
気配はなかったはずなのに、後ろから俺を刺したあの少女が現れた。
「君は向こうの世界で言うところの死を迎えたわ。今頃君の知り合いはみんな嘆いているんじゃないかしら」
「そうか。やっぱりあっさり死んじゃったんだな、俺。せめて、俺を殺した理由を教えてくれ」
軽い語調だが、割と真剣に聞いているつもりだ。彼女もそれが何となく伝わったようで、
「私と一緒に来ればそれもわかるわ」
と俺に背を向け歩き出した。もちろん俺はそのあとについていった。




