仕事が雑すぎるあの男
早苗がいないので一人で帰ることにしたのだが、晴明が急にうちに来たいと言い出した。俺はそれでもいいのだが、早苗が絶対に怒るので
「いや、今日はというかずっとだめだ。早苗が怒ったら面倒だからな」
「それは私が何とかしますからどうか入れてくださいまし」
晴明が捨てられた子犬のような目で見つめてくる。どんな感じなのか今まで理解できなかったが、こういうことか。これは断れない。
「仕方ないな。ただお前のためにも飯食ったらすぐ帰ったほうがいいと思うぞ」
「それは残念ですわ。でも仕方がないですわね、今日のところはそれで良しとしますわ」
晴明は少し残念がりながらも、とりあえず妥協してくれた。どちらかというと妥協したのは俺なのだが。
「晴明は今日は夕飯は作らなくていいんだな」
「慧音さん、そのの通りですわ。あまり遅くならないうちに帰ってきますわ」
そういってから俺のスキマに入って行った。
妖怪の山に出てみると、そこには
「やぁ、久しぶりだね」
とあの無能な神様がいた。
「君さぁ、だんだん俺にたいする尊敬とか畏怖とかなくなってきてない?」
「そりゃお前の記憶とかの修正が適当すぎるからな。幻想郷の歴史に残ってるってどういうことだよ」
「そうですわ。私の記憶だけ残すなんていったい何を考えているんだか、さっぱりですわ」
晴明もそういった。彼女だけ残ったのも手違いなのか。
「いやぁ、ごめんね。僕も忙しくてさぁ」
「こんだけ穴だらけなら元に戻してもいいんじゃないのか?」
前々から思っていたことなので聞いてみたが
「そういうわけにもいかないんだ。あと、外の世界で東風谷早苗に会ったでしょ、それ僕がゆがみ正しても起こることだったから。ついでに言うとこうなるのも決まってたっぽい」
と今度はまた違ったことを口走り始めた。まさかそんなことはないだろ。
「それも今ここで覆いついたでたらめに違いありませんわ」
「いやいや、これは本当なんだ。証明はできないけどね」
「とりあえず、今回はそれを信じる。ただ、記憶や記録が残っているのはお前のミスだろ?」
「そうだね。そこは修正しなくてもいいかな?」
修正ということは晴明の記憶がなくなるということでもある。今更それはできない・
「こいつの記憶もあるからもう手は加えなくてもいい」
「そう、じゃあ僕は帰るね。まあもう会うこともないだろうから」
神様はそう言い残して光とともに消えていった。
「さあ、行きましょう」
「お、そうだな。今頃もう作ってると思うから急ごう」
俺たちは小走りで神社を目指した




