月の都は中華風
学校に行けるか心配になってくるくらい体中が痛い
依姫はあっさり話が通ったが、豊姫はどうなっているだろうか。怒ってないといいんだが。考え事をしていると、早苗が俺の服の袖を引っ張ってきた。
「どうした、なんか気になることでもあったか?」
「いろいろあるんですけど、あの月の方とはどういった関係なんですか?」
「えっと、それはだな・・・」
痛いところを突かれてしまった。ここで嫁です、なんて答えたら早苗に何を言われるかわかったものではない。すると、依姫が振り向いて、こう言い放った。
「遊助は、私の夫です。誘惑したら、お姉さまも私も生きては返してあげませんよ」
「なっ、遊助さん結婚してたんですか!?」
「遊助君も、長生きしてたからそういうこともあるのかとは思ってたけど、まさかほんとにそうだとは」
なんてことしてくれるんだ、依姫。早苗から変なオーラ出てるし。
「遊助、お姉さまもずっと待ってたんですが、この前変な地球人どもが来てから、機嫌が悪くなってしって、あれを見てください」
早苗を無視して依姫は話を変えた。この場にだんだんと居たくなくなってきた。しかし、次に見えた光景は身の危険を感じるほどだった。
「まじか、どんだけ荒れてるんだよ・・・」
綿月邸はかなり広いということが、中にいる召使いの気配でなんとなくわかっていたのだが、その広い邸宅の広い庭に、深さ100mほどのクレーターが生まれていた。
「お姉さまは、自分の扇子を表の月で何度も使い、更地をさらに平たく整地しても収まらなかったようで、庭で爆弾か何かを使っていました。それで、このようなものが」
「月ってすごいんだね、私もここに住んでみたいよ」
「下賤な地球人はここには住まわせられません。穢れが入ってきた時点で、月に寿命の概念が生まれてしまいますから」
じゃあ、依姫が今俺たちの近くにいるのもやばいんじゃないか、と思うんだが。
「とにかく早く会わないと裏の月全部更地にしちゃいそうで怖いな」
「まったくです。お姉さまと戦って勝つことはできますが、あれを止めることはできません」
さらに歩いて行った先に見える襖を開けると、そこには豊姫がサンドバックを滅多打ちにしている姿があった。
「お姉さま、依姫です。お伝えしたいことがあるのですが」
「なに?今私はこれを殴るのに忙しいのよ。遊助は帰ってこないし、みんなの頭は固いし、イライラすることばっかりだわ!」
「お姉さま、話を」
「もうっ、うるさいわね!遊助連れてきてから報告に来なさいよ」
豊姫はサンドバックを殴り続けつつも、こちらを向いた。
「よう、豊姫。久しぶりだな。今まで会えなくてごめんな」
俺がそう豊姫に言うと、豊姫はサンドバックからこちらに視線を向けてきた。
「遊助、戻ってきたの?」
「ああ、待たせたな。寂しい思いさせて悪かったな。いくらでも殴られてやるよ」
「殴ったりしないけど、今日の夜は私の相手して―!何千万年待ったと思ってるのよ」
まずそこからか。
「でもその前にまず宴会ね。またあなたとお酒が飲めるなんて幸せだわ」
月人が地上にいたころからの酒宴は今も変わらずやっているようだった。
また東方の2次創作を書いていそうな数か月後の自分が見えた




